「従業員を疑う=信頼を壊す」ではない|セブンイレブン転売問題から見る、「疑う」への誤解を解く方法(姫路の特定社労士が解説)

労務の相談を受けていると、経営者からこんな言葉をよく聞きます。「うちは家族みたいな会社だから、社員を疑うような仕組みは入れたくない」。

その気持ちはよくわかります。でも私は、この言葉を聞くたびに、少し引っかかるものを感じます。「疑わない」ことと「無防備でいる」ことは、本当に同じなのだろうか。

先日、セブン-イレブンが全国の加盟店に警告文を出したというニュースがありました。一部の店舗で、オーナーや従業員が人気キャラクターの限定商品を発売前に抜き取り、転売していたというものです。このニュースを見て、私は経営者の皆さんからよく聞くこの言葉を思い出しました。


目次

  1. 「家族みたいな会社」が抱えるリスク
  2. セブンの件で私が考えたこと
  3. 仕組みを入れることは、愛情の否定ではない
  4. よくある質問
  5. まとめ

「家族みたいな会社」が抱えるリスク

こう感じる経営者の会社では、たとえば経理も現金管理も、長年勤めているベテラン社員お一人に任せきり、というケースをよく見かけます。チェックする人はいません。悪気があるわけではなく、「疑うのは失礼だ」という感覚が、そのまま仕組みの不在につながっているのです。

そういうとき私は、「仕組みを入れることと、その方を信じることは、両立できますよ」とお伝えしています。最初は納得していただけないことも多いですが、時間をかけて話すうちに、受け入れてくださる方がほとんどです。


セブンの件で私が考えたこと

セブン-イレブン・ジャパンは今月13日付で、全国の加盟店に注意喚起の文書を出しました。「事前に告知した日時前の販売」「店舗関係者による買い占めや転売」といった不適切な事例が、SNSやお客さまからの指摘で散見される、という内容です。悪質なケースでは、加盟店契約の中途解約に踏み切った例もあると報じられています。

この件について、ネットでは「モラルがない」という批判が集まっています。もちろん、やったこと自体は擁護できません。ですが私は、これを個人のモラルの問題だけで片付けたくないのです。限定商品が目の前にあり、一人がすべてを回し、誰もチェックしていない。この条件が揃えば、真面目な人でもふっと手が出てしまう。これは、人間の弱さの話であって、モラルの高い低いの話ではないと私は思っています。


仕組みを入れることは、愛情の否定ではない

冒頭の社長のように、「仕組みを入れる=社員を疑う」と感じる経営者は、実はとても多いです。ですが私は、順番が逆だと思っています。

本気でその人を大切に思っているからこそ、その人が魔が差さないように、環境を整えておく。これは疑いではなく、その人の人生を守るための配慮です。何も対策をせず、後から「あいつは裏切った」と嘆くほうが、よほど無責任だと私は感じます。

仕組み(ハード)だけでは、職場は息が詰まります。だから同時に、「これはあなたを守るためだよ」と伝える対話(ソフト)が要ります。この両輪が噛み合って初めて、疑いではなく信頼として仕組みが機能するのです。


よくある質問

Q. 長年勤めてくれている社員に「チェック体制を入れます」と言うと、傷つけてしまいませんか?

A. 伝え方次第です。「あなたを疑っているから」ではなく、「あなたが変な疑いをかけられないようにするため」「私自身がもし同じ立場だったら、仕組みがある方が気が楽だから」という伝え方をすると、多くの場合は受け止めてもらえます。むしろ「一人で全部背負わなくてよくなった」と、ほっとされる方が多い印象です。


まとめ

セブンの件を「あの店員が悪い」で終わらせるのは簡単です。でも、あなたの会社にも「あの人だから大丈夫」で仕組みが止まっている仕事はないでしょうか。

疑うことと、信頼することは、対立しません。むしろ、本気で信頼しているからこそ、その人を守る仕組みを用意する。それが、私が経営者の皆さんに伝え続けたいことです。自社の状況を一度整理してみたい方は、ぜひ当社にご相談ください。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に、常識を教えてあげたところ、解約された過去あり。それでも伝え続けるのが私の役目だと思っている。

姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。

支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士でありたい。

生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCに直接入り込んで当日動くシステムを作る実装型伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。