経営者の相談に乗っていると、こんな場面によく出会います。「本当は休ませたい。でも、今止めたら現場が回らない」。頭ではわかっていても、止める決断ができない。そういう経営者は、決して少なくありません。
先日、JR西日本の倉坂昇治社長が「大雨などで乗務員の休憩が不足したときは、列車の運休も選択肢にする」と会見で述べました。この話を聞いて、私は「止める」と言えるかどうかは、経営者の覚悟の話だと改めて感じました。
目次
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「止める」が言えない、本当の理由
「休ませたいけど止められない」という経営者に理由を聞くと、たいてい返ってくるのは「お客さんに迷惑がかかる」「他のスタッフにしわ寄せがいく」という言葉です。どちらも、責任感の強さの表れです。真面目な経営者ほど、この壁にぶつかります。
でも、その責任感の矛先が、いつのまにか「目の前の一人」に向いてしまっていることがあります。「あなたなら大丈夫でしょう」という期待は、時に一番頑張っている人を追い詰めます。
JR西日本の決断から見えるもの
今回のJR西日本の会見は、6月に鷹取駅で起きた誤通過を受けたものでした。前日からの大雨で、6時間の休憩を予定していた運転士が1時間しか休めず、駅を通り過ぎてしまったのです。会社は、点呼のときの様子や本人の申告から「問題なし」と判断していました。
その反省から出てきたのが、「休憩が不足したら運休も選択肢にする」という方針です。売上や利便性より、人の安全を優先する。口で言うのは簡単ですが、目の前にお客さんが待っている中でその決断をするのは、本当に重いことだと思います。
売上より優先すべきものを決めておく
中小企業でこれと同じ決断を、いきなり現場で下すのは難しいものです。だからこそ私がお勧めしているのは、「何かが起きる前に、優先順位を決めておく」ことです。
「これだけ休憩が取れていなければ、シフトを組み直す」「一人に依存している業務は、平時のうちに複数人で回せるようにする」。こうした基準をあらかじめ言葉にしておけば、いざというとき現場任せにならず、経営者自身も判断しやすくなります。危機のときに初めて考えるのではなく、平時に決めておく。これが、口だけで終わらせないための一番の近道です。
よくある質問
Q. 人手が足りず、優先順位を決めても結局「止められない」状態です。どうすればいいですか?
A. まずは、一人に依存している業務を洗い出すことから始めましょう。すべてを一気に変える必要はありません。一番リスクの高い一箇所から、平時に手を打っておくことが大切です。人手不足そのものの解決には採用や定着の見直しも合わせて必要になりますので、労務と採用の両面から一緒に整理することをお勧めします。
まとめ
JR西日本の決断を、遠い大企業の話として眺めるのは簡単です。ですが、あなたの会社にも「本当は止めたいのに、止められない」場面はないでしょうか。
止める勇気は、いざというときに突然湧いてくるものではありません。平時に「何を優先するか」を決めておくことが、その勇気の土台になります。自社の優先順位を一緒に整理したい方は、ぜひ当社にご相談ください。
筆者プロフィール
泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー
「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に、常識を教えてあげたところ、解約された過去あり。それでも伝え続けるのが私の役目だと思っている。
姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,000件超(2026年6月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。
支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走とダメ出しができる社労士でありたい。
生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、経営者のPCに直接入り込んで当日動くシステムを作る実装型伴走を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。
