AIで22人中18人を解雇するという投稿が話題|姫路の生成AIアドバイザーが伝える、人を減らす前に10年後の採用難とAIの値上げ・停止まで想定すべき理由

2026年10月2日の夜、「知り合いがUIデザインの会社に勤めているが、AIを活用することに決まって、22人の会社から18人を解雇するらしい」という投稿がXに流れました。残るのは社長、経理、営業、AIを使う人の4人ぐらいだろう、という内容です。この投稿はTogetterにまとめられ、閲覧は5万回を超えました。

コメント欄には、「品質が落ちて取引先が離れるのではないか」「AIは建前で、実際は仕事が減っているのではないか」といった声が並んでいます。翌日には、別の経営者が、AIで人を減らすのは現実的ではないと語る人もいるが、自社はかなり減らしたと投稿しました。社内を20人から4人にした一方で、「築き上げてきたものがAIで完全に崩壊した」とも書いていて、こちらは8万回を超えて閲覧されています。

ただ、この2つの投稿を読んで私が引っかかったのは、「会社は回るのか」という、今日、明日の話ではありません。人を減らした後の、3年後、5年後、10年後の話です。今日はそれについて、私の持論をお話しします。


目次

  1. 22人中18人の解雇を伝えるX投稿と、SNSの反応
  2. AIで人を減らすこと自体を、私は否定しません
  3. 経営者が考えるべきは、3年後、5年後、10年後の会社をその人数でつくれるか
  4. 一度人を手放すと、必要になったときに簡単には雇えない
  5. 生成AIが極端に値上がりしたり、使えなくなったりする日の備えはあるか?
  6. 生成AIうつ、AIエージェントうつも出てくると、私は考えています
  7. 人を減らす前に、中小企業がAI導入と並行してやること
  8. よくある質問

22人中18人の解雇を伝えるX投稿と、SNSの反応

最初の投稿は、2026年10月2日23時25分にXに書き込まれました。UIデザインの会社がAIの活用を決め、22人の社員のうち18人を解雇する、という知り合いから聞いた話です。Togetterにまとめられた反応には、次のようなものがありました。

  1. AIは建前で、実際は仕事が減って、経営が苦しいのではないか
  2. UIデザインという仕事そのものが、AIで変わってしまうのではないか
  3. AIが出した成果物の品質が落ちて、取引先が離れるのではないか

22人のうち、残れるのが4人。働いている人にとっては、重い数字です。この話の怖さは、18人という人数よりも、残る4人の役割が社長、経理、営業、AIを使う人だけで説明できてしまうところにあります。

そして2つ目の投稿の経営者は、AIで人を減らすのは現実的ではないと語る人もいるが自社はかなり減らした、と書き、外注もゼロにして、社内を20人から4人にしました。人を減らしても会社は回った。けれど、その先で「築き上げてきたものがAIで完全に崩壊した」。この2つが同じ投稿に並んでいることこそ、人を減らす判断で本当に見るべきものが、今の業務が回るかどうかではないことを示していると、私は受け止めました。


AIで人を減らすこと自体を、私は否定しません

AIを使って人を減らしても、業務が回るのであれば、私はそれで構わないと考えています。中小企業にとって人件費は最も重い負担のひとつで、同じ成果が少ない人数で出せるなら、その選択を責める理由はありません。

私自身、当社の仕事で生成AIに置き換えられる部分は、どんどん置き換えています。生成AIアドバイザーとして、お客様にも「使えるところから使ってください」とお伝えしているくらいです。私が言いたいのは、人を減らすなということではありません。「今の業務が回るかどうか」だけで、人を減らすかどうかを決めないでほしいということです。


経営者が考えるべきは、3年後、5年後、10年後の会社をその人数でつくれるか

業務が回るかどうかは、今月の話です。経営者が考えるべきなのは、その人数で、3年後、5年後、10年後の会社をつくれるかどうかです。

投稿のとおり4人になったとして、考えてみてください。社長、経理、営業、AIを使う人の4人は、誰か1人が病気や退職で抜けた時点で、会社の人手の25%を失います。そのうえ、新しい仕事を取ってくる人、入ってきた若手を育てる人、社長の次を担う人は、この4人の中にいるでしょうか。

今の売上は、これまで育ててきた人たちがつくっています。人を減らして、残った人の分だけで今の売上を守れたとしても、次の世代を育てる仕事は止まります。人を減らす判断は、今日の人件費を下げる判断であると同時に、10年後の担い手を手放す判断でもあるのです。


一度人を手放すと、必要になったときに簡単には雇えない

ここでは、法律の話と採用市場の話を分けて考えてください。まず法律です。日本では、一度雇った人を簡単に辞めさせることはできません。労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、無効としています。人員削減を理由にする整理解雇でも、人員を減らす必要性、解雇を避ける努力、対象者の選び方の合理性、本人や労働者側への説明が、裁判例で厳しく見られます。

そしてもう一方の採用市場では、逆の問題が起きます。減らした人を、必要になったときに雇い直すことが、実はもっと難しいのです。2026年10月1日のNHKニュースは、売り手市場が続くなか、望まない転勤を廃止するなど人事制度を見直して、人材を確保しようとする企業の動きを伝えていました。人を採りたい会社が、条件を見直してまで求職者に選ばれようとしている時代です。

AIを活用しても思うように成果が出なかったとき、18人をもう一度、同じ条件で採れる会社がどれだけあるでしょうか。募集を出しても応募が来るとは限りません。来たとしても、前の18人が持っていた取引先との関係や、社内の仕事の進め方を、一から覚えてもらうことになります。辞めた18人が戻ってくる保証もありません。日本では、辞めさせるのも簡単ではなく、雇い直すのも簡単ではありません。だからこそ、一度手放す判断は、元に戻せない前提で下す必要があります。


生成AIが極端に値上がりしたり、使えなくなったりする日の備えはあるか?

もうひとつ、人を減らす前に考えておくべきことがあります。生成AIは、自社が持っている道具ではないということです。他社が提供するサービスに、毎月料金を払って借りているだけで、値上げも、仕様変更も、サービスの終了も、使う側には止められません。

極端な例を挙げます。月2万円で使えていた生成AIが、ある日突然、月200万円になったらどうなるでしょうか。年間で見ると、24万円が2,400万円です。ほかのサービスに乗り換えるとしても、業務のやり方を組み直す時間が必要です。その間、18人を手放した会社は、何で仕事を回すのでしょうか。

当社も、生成AIに置き換えられる部分は置き換えていますが、頭の中には、月2万円が月200万円になる日も、サービスそのものが止まる日も入れています。そうなっても事業が回るように、準備と覚悟をしているつもりです。生成AIがすべて人間の代わりになると思い込んで経営している会社のほうが、私は怖いと感じます。


生成AIうつ、AIエージェントうつも出てくると、私は考えています

「生成AIうつ」「AIエージェントうつ」という正式な病名があるわけではありません。ただ私は、AIが仕事に入り込むほど、そうした不調を訴える人が必ず出てくると考えています。理由は次の2つです。

  1. 人が減った分の仕事が、AIの出力を確認し続ける作業として、少数の人に集中するから
  2. 相談できる同僚が減り、AIとだけ向き合う時間が増えるから

AIは疲れを知らず、24時間、いくらでも答えを返してきます。そのペースに人間が合わせようとすれば、確認作業に終わりがなくなります。しかも、確認した結果の責任は、AIではなく人が負います。22人で分けていた責任を4人で負うことになれば、1人あたりの重さは5倍以上になります。

法律上、会社には、社員が生命や身体の安全を確保して働けるように配慮する義務があります(労働契約法第5条。心身の健康も含まれると解されています)。ただ、義務かどうかの前に、社長が自分で選んで進めた導入のせいで社員が潰れていくのは、モラルの問題です。AIを導入すると決めた経営者には、AIの導入で社員にどんな負担が出るかまで想定しておく責任があると、私は考えています。


人を減らす前に、中小企業がAI導入と並行してやること

では、中小企業は何をしておけばいいのか。私は、ハード(制度)とソフト(関わり方)の両方で考えます。

ハード(制度)で整えること

人を減らす前に、次の4つを紙にして残してください。

  1. 将来に必要な人員と年齢構成の計画(どの仕事をAIに任せ、どの仕事を人に残すか)
  2. AIが止まった日に、人がその業務をやる手順書(業務ごとに1枚)
  3. AIの利用料が10倍、100倍になったときの損益の試算と、「この金額までなら使う」という上限額
  4. AI導入後の残業時間、欠勤、休職の人数を、毎月社長が確認する仕組み

この4つを書き出す過程で、「この仕事は人に残す」「この人数は減らせない」という判断が、自然に見えてきます。計画を紙にしてから減らす会社と、紙にしないまま減らす会社では、減らした後に起きることがまったく変わります。

ソフト(関わり方)で伝えること

ソフトで大事なのは、AIを入れる理由を、社長が自分の言葉で社員に話すことです。人を減らすためなのか、空いた時間で新しい仕事をつくるためなのか。ここが伝わっていない会社では、社員はAIの導入を、自分のクビへのカウントダウンとして受け取ります。

そして、AIに任せた仕事の確認や判断を、1人に抱えさせないでください。週に1回、5分でいいので、「AIの答えで迷ったことはないか」を社長や上司が聞く場をつくります。AIの答えに迷ったときに相談できる人が、社内に1人でもいるかどうかで、社員の負担は大きく変わります。


よくある質問

Q1. AIで人を減らすかどうかは、何を基準に決めればいいですか?

A. 次の3つを、すべて満たしているかで決めてください。

  1. 今の業務が、その人数で回っている
  2. 数年先の仕事も、その人数で回る見込みがある
  3. AIが止まったり、値上がりしたりしても、事業が止まらない

多くの会社は、1つ目だけで判断してしまいます。2つ目と3つ目を満たしていないのに人を減らすのは、将来の自分に大きな借金を背負わせる判断です。

Q2. 社員が「自分の仕事がAIに取られる」と不安がっています。どう伝えればいいですか?

A. 社員が不安なのは、仕事が減ることそのものよりも、AIが入った後の会社に自分の居場所があるのかが見えないことです。「この仕事はAIに任せる。ただし、あなたにはこの仕事を担当してほしい」と、3年後の会社の姿と一緒に、社長が1人ずつに言葉で伝えてください。居場所を言葉にして渡された社員は、AIを敵ではなく道具として使い始めます。


まとめ

22人中18人を解雇するという投稿に対して、SNSでは品質低下や経営不振を心配する声が目立ちました。ただ、私が本当に問いたいのは、今、業務が回るかどうかではなく、その人数で3年後、5年後、10年後の会社をつくれるかどうかです。一度人を手放すと、必要になったときに簡単には雇えません。生成AIが値上がりしたり、使えなくなったりする日も、AIで社員が疲れていく日も、必ず来ると考えておいたほうがいいのです。

計画と手順書、試算、毎月の確認という仕組み(ハード)。AIを入れる理由を社長が自分の言葉で語り、迷ったときに相談できる場をつくる関わり方(ソフト)。この両輪が揃ってはじめて、AIで人を減らす判断は、会社を強くする判断になります。

社長自身が本気になって、「その人数で、10年後の会社をつくれるのか」「AIが止まった日にも、事業は回るのか」と問い続けてほしいのです。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

姫路を拠点に中小企業延べ150社以上へ伴走。採用・定着・労務の相談累計3,100件超(2026年10月現在)。北は福島、南は佐賀まで顧問先があり、全国オンライン対応。

中卒→ニート→売れない漫画家→特定社労士。国立高専を半年で中退し、20代前半は全国誌でギャグ漫画を2年間連載するも、鳴かず飛ばずのまま終わる。定職に就かない時期を経て、勤め先では悪質な嫌がらせにも遭う。「仕事ができない人間」として過ごした日々と、あの職場の記憶。その両方が社労士を志すきっかけとなる。2014年に社会保険労務士登録、2019年7月に独立。

「採用より定着が先」——これが口癖であり、信念。耳が痛くても言い続ける。親に与えてもらった環境や収入を「全て自分の力」と誤解する2代目社長に、常識を教えてあげたところ、解約された過去あり。それでも伝え続けるのが私の役目だと思っている。

支援の軸は制度(ハード)と対話(ソフト)の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、人が辞めない組織が動き出す。伴走と「耳が痛い話」ができる社労士でありたい。

生成AI支援では「研修を受けた企業の9割が1ヶ月後に何もしていない」という現実に向き合い、クライアントのPCを直接触り、その日のうちに仕組みを作る「実装型伴走」を展開。商工会・商工会議所・大手生命保険会社でのセミナー講師としても精力的に活動中。