シンナーが来ない、人も来ない。2026年の中小建設業・三重苦を姫路の採用定着士が解説する



「シンナーが入ってこない。塗装が止まってる」

2026年の春から夏にかけて、姫路の建設現場でこんな声が増えています。ホルムズ海峡の封鎖に端を発した資材不足が、「遠い中東の話」では済まなくなってきた。それがいま、私たちの足元で起きていることです。

6月14日、米国とイランが停戦合意に達し、ホルムズ海峡の封鎖解除が発表されました。ニュースを見て「これでひと安心」と思った経営者の方もいるかもしれません。でも、現場の実態はそう単純ではない。

この記事では、ホルムズ海峡問題が姫路の中小建設会社にどんな影響を与えているか、そして「この苦境の中でも踏ん張れている会社」と「厳しくなっている会社」の差はどこにあるのかを、社労士の視点から整理します。


目次

  1. ホルムズ海峡で何が起きたのか
  2. 建設現場への具体的な影響——シンナー・断熱材・塩ビ管
  3. 「人も来ない」——資材不足と人手不足のダブルパンチ
  4. この苦況で差がつく会社・つかない会社
  5. よくある質問
  6. まとめ

ホルムズ海峡で何が起きたのか

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾と外海をつなぐ幅わずか50〜80kmの水路です。世界の原油輸送量の約2割が毎日ここを通過する。日本が輸入する原油の大半もこのルートを通ります。それが2026年2月末に事実上封鎖されました。

影響は「原油価格が上がる」だけにとどまりません。原油から作られるナフサ(粗製ガソリン)は、シンナー・断熱材・塩ビ管・樹脂建材など、建設現場に欠かせない資材の原料です。ナフサが入ってこなければ、これらの資材そのものが作れなくなる。

6月14日の米イラン停戦合意でホルムズ海峡の再開通は決まりました。しかし、物流が正常化するまでには6〜8週間かかるとされています。しかもイランは通行船舶への検査・通行料の徴収を予定しており、しばらくは混乱が続く見通しです。

「合意で終わった」ではなく、「合意してからが本番」という理解が必要です。


建設現場への具体的な影響——シンナー・断熱材・塩ビ管

ホルムズ封鎖が建設業に与えた影響を、現場ベースで見ていきます。

シンナーが来ない、塗装が止まる

ナフサ不足の直撃を受けたのが塗料・シンナーです。3月以降、シンナーが50〜75%値上がりし、入手困難な状況が続いています。塗装工程がストップした現場は一件や二件ではない。工程が狂えば後続の業者にも連鎖して、現場全体が詰まっていきます。

断熱材・樹脂建材の値上がりと品不足

断熱材は4月〜5月出荷分から約40%値上がりしました。塩ビ管・雨樋・樹脂サッシなど樹脂系建材も原料不足で生産が止まり、メーカーからの受注制限が相次いでいます。

アルミ価格の上昇

中東は中国を除く世界のアルミ生産の約23%を占めます。価格は2月末比で5%前後上昇し、4,000ドル/トン超という予測も出ています。サッシや外装材を多用する建設会社には直撃です。

成約済みの案件でも、入荷遅延・価格高騰で採算が崩れるケースが出ています。「取れたのに儲からない」。そういう状況が各地の現場で起きています。


「人も来ない」——資材不足と人手不足のダブルパンチ

資材問題だけならまだしも、中小建設業にはもう一つの重荷が重なっています。人手不足です。

団塊の世代が後期高齢者となった2026年、熟練技術者の大量引退が進んでいます。若手の入職者は増えない。現場を回せるベテランは減る一方。「材料を持ってきても、それを扱える人間がいない」という声も聞こえてきます。

さらに追い打ちをかけるのが、時間外労働の上限規制です。2024年から建設業にも適用された働き方改革の規制により、現場の回し方を根本から見直す必要が出てきた会社も少なくありません。

  • 資材が入らない → 工程が止まる
  • 人が足りない → 現場を回せない
  • 価格は上がった → 利益が出ない

三重苦が重なっているのが、2026年の中小建設業の現実です。

ここで社労士として言えるのは、「資材と人は別の問題のようで、根っこはつながっている」ということです。定着しない職場は、人が来ない→育たない→辞める、というループを繰り返す。その余裕のなさが、危機への対応力も奪っていきます。


この苦況で差がつく会社・つかない会社

苦しいのはみんな同じです。でも、その中でも「なんとか回っている」「むしろ受注が増えた」という建設会社があります。何が違うのか。

①仕入れ先との長期的な信頼関係がある

資材不足のとき、優先的に回してもらえるのは「いつも付き合いのある会社」です。安いからといって取引先をコロコロ変えてきた会社は、真っ先に後回しにされます。これはハード面の話ですが、「継続的な取引関係を維持する」という姿勢は、信頼というソフトの積み重ねでもあります。

②辞めない職人・現場スタッフがいる

「人が定着している」というのは、経営安定の最大の武器です。人手不足が深刻な今、社員が辞めない会社は採用コストがかからない分だけ体力を温存できます。逆に、毎年2〜3人辞めていく会社は、採用と育成にお金と時間を使い続け、疲弊していく。

定着には「給与が上がる仕組み」などのハード面と、「ここで働いていたい」と思わせる承認・コミュニケーションのソフト面の両方が必要です。どちらか一方では長続きしません。

③得意分野に絞り込んでいる

「なんでも受ける」から「これだけはウチが一番」へ。専門性を絞り込んだ会社は、採算が悪い案件を断りやすく、価格交渉力も高い。資材不足の今、中途半端な受注をして採算が悪化するより、勝てる分野に集中するほうが結果的に強い。

外部環境の嵐は、会社の「体力差」を浮き彫りにします。この時期に差がついているのは、技術力だけではなく、人と仕組みの積み重ねです。


よくある質問

Q. ホルムズ合意後、資材価格はいつごろ下がりますか?

A. 海峡の物流正常化には6〜8週間かかるとされており、価格への反映にはさらに時間がかかります。イランによる通行料徴収・検査も予定されており、短期での急落は見込みにくい状況です。2026年中は高止まりを前提とした経営計画を立てることをお勧めします。

Q. 建設業で「人が定着する職場」を作るには、何から始めればいいですか?

A. まず「なぜ辞めているか」の実態把握から始めてください。給与・労働時間・人間関係・評価——退職理由は会社によって違います。面談の仕組みや評価制度(ハード面)を整えながら、現場の声を聞く文化(ソフト面)をあわせて作っていくことが大切です。どこから手をつければよいか分からないときは、ぜひ当社にご相談ください。


まとめ

シンナーが来ない。人も来ない。価格は上がった。——2026年の中小建設業の現場は、正直しんどい状況です。

でも、この苦境で差がつくのは「外部環境の良し悪し」ではなく、「人と仕組みをどれだけ整えてきたか」です。

仕入れ先との信頼関係、社員の定着、得意分野への集中——これは今日明日で変えられることではありません。でも、今からでも始められることでもあります。

特に「人の定着」は、給与制度・評価制度などのハード面と、承認・コミュニケーションのソフト面の両輪で取り組む必要があります。どちらかだけでは長続きしません。

「うちの会社、どこから手をつければいい?」そのご相談が一番多い入口です。姫路を拠点に中小建設業の採用・定着を支援してきた当社に、まずお気軽にご連絡ください。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)|姫路の社会保険労務士
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年6月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。

姫路を拠点に、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する伴走支援を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路の経営者様はもちろん、遠方の方もオンライン対応可能ですので、お気軽にご相談ください。

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