1000件の不正が隠れた職場の共通点。姫路の中小企業は「声を上げられる組織」になっていますか



ニデック(旧日本電産)が、1000件を超える品質不正が社内で行われていたとして、社長が公式に謝罪しました。
無断で部材を変更していたケースが1000件以上。「重く受け止めている」という言葉が報道されていますが、私が気になったのはそこではありません。

なぜ1000件もの不正が、長期間にわたって隠れていたのか。

これは製造業の大企業だけの話ではありません。姫路の中小企業でも、「問題を上に言えない」「見て見ぬふりをする」という文化が根付いてしまうことがあります。


目次

  1. 不正が「隠れる」組織の共通点
  2. 心理的安全性とは何か
  3. 内部通報制度は「あるだけ」では機能しない
  4. 経営者として今すぐできること
  5. よくある質問
  6. まとめ

不正が「隠れる」組織の共通点

1000件以上が長期間隠れていたということは、「問題だとわかっていても、言えなかった人たちがいた」ということです。

現場の担当者が「これはまずい」と思っていても、上司に言えなかった。あるいは上司も知っていたが、もっと上には言えなかった。そういう「言えない文化」が積み重なって、1000件という数字になっていったのではないかと思います。

不正が隠れる組織には共通のパターンがあります。

  • 悪いニュースを持っていくと叱責される
  • 「どうせ言っても変わらない」という諦めがある
  • 問題を報告した人が損をする(評価が下がる・冷遇される)
  • 上が「聞きたくないこと」を聞かない姿勢を示している

どれも「人の問題」ではなく「組織の設計の問題」です。


心理的安全性とは何か

最近よく聞く「心理的安全性」という言葉があります。
簡単に言うと、「この場では、正直に言っても大丈夫だ」という感覚のことです。

心理的安全性が低い職場では、こういうことが起きます。

  • ミスを報告しない・隠す
  • 問題に気づいても黙っている
  • 「どうせ言っても変わらない」と諦める
  • 上司の意見に全員が賛成する(本音では違う)

これが積み重なると、ニデックのように大きな問題が水面下で膨らんでいきます。
「うちはそんな大企業じゃないから」と思うかもしれませんが、規模は関係ありません。5人の会社でも、心理的安全性が低ければ同じことが起きます。


内部通報制度は「あるだけ」では機能しない

「うちには相談窓口があるから大丈夫」という経営者の方もいるかもしれません。
でも、相談窓口があっても「使われない」のが現実です。

なぜ使われないか。

  • 「通報したら自分が不利になる」
  • 「誰が通報したかバレる」
  • 「言っても握りつぶされる」

こういう不安がある限り、どんな立派な制度を作っても機能しません。
制度と同時に、「問題を言える文化」を育てることが必要です。

また、2022年施行の「公益通報者保護法」改正により、常時使用する労働者が300人超の事業者には内部通報制度の整備が義務化されています。300人以下の中小企業は義務ではありませんが、制度を整えることで「言える文化」の土台を作ることができます。


経営者として今すぐできること

① 自分自身が「言いやすい」姿勢を見せる

経営者がミスの報告や問題提起を受けたとき、どう反応するか。
怒鳴る・叱責する・「なんでそうなった」と責める。これをやると、社員は次から言ってこなくなります。

「教えてくれてありがとう。どうすれば防げるか一緒に考えよう」
この一言が、言える文化をつくります。

② 1on1や定期面談を仕組みとして設ける

月1回でも、15分でも、社員と1対1で話す時間を作ることが大切です。
形式的な面談ではなく、「何か困っていることはないか」を本気で聞く場にすることで、問題の早期発見につながります。
「言いに行く」のではなく、「聞きに来てくれる」という構造を作ることがポイントです。

③ 内部通報制度の整備と周知

制度を整えることも大切です。
通報者が特定されない仕組み、外部窓口の設置、通報後の対応フローの明確化。これらが揃って初めて「使える制度」になります。
就業規則にも「通報を理由とした不利益取り扱い禁止」を明記しておくことをお勧めします。


よくある質問

Q. 小さな会社で内部通報制度を作っても意味がありますか?相談相手が経営者しかいません。

A. だからこそ外部窓口が重要です。社労士や外部の相談機関を「通報先」として設定することで、「社長には言いにくいことを言える場所」が生まれます。社内だけで完結しようとすると、小規模な組織ほど機能しにくくなります。

Q. 社員が問題を報告してきたとき、どこまで調査すべきですか?

A. まず「事実確認」と「報告者の保護」を最優先にしてください。感情的に動かず、事実を丁寧に把握してから判断することが原則です。必要に応じて社労士や弁護士に相談しながら進めることで、対応の公正性を保てます。


まとめ

1000件の不正が隠れていた職場は、最初から「不正をしよう」という文化があったわけではないと思います。少しずつ、「言えない」「聞かない」が積み重なった結果です。

姫路の中小企業でも、同じことは起きます。今日からできることは小さくていい。
まず経営者自身が「言ってくれてありがとう」と言える姿勢を見せることから始めてください。

仕組みとしての内部通報制度・就業規則を整えることと、日常の対話で「言える空気」を育てること。この両輪が、不正を防ぐ最大の防波堤になります。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。


筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年5月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

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