2025年夏季賞与、中小企業はどれくらい払っている?業種別データで自社を比較してみよう



もうすぐ夏季賞与の季節です。「今年はいくら出せばいいか」「他の会社はどのくらい払っているのか」。そんなことが頭をよぎる経営者も多いのではないでしょうか。

今回は、厚生労働省の調査データをもとに、2025年夏季賞与の業種別・規模別支給状況を整理しました。自社の水準を客観的に確認するためのデータとして、ぜひ参考にしてください。

また、単なるデータ紹介にとどまらず、採用・定着の観点から「賞与をどう考えるか」についても触れます。


目次

  1. 2025年夏季賞与の全体傾向
  2. 業種別に見ると差は大きい
  3. 支給事業所数割合から見えること
  4. 「賞与を給与に振り替える」動きとは
  5. 採用・定着の観点から賞与を考える
  6. よくある質問
  7. まとめ

2025年夏季賞与の全体傾向

厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2025年夏季賞与)によると、全産業の1人平均支給額は次のとおりです。

  • 従業員5〜29人の事業所:約28.4万円(前年比+0.2%)
  • 従業員30〜99人の事業所:約37.8万円(前年比+4.9%)

3年連続で前年比プラスという結果です。中小企業でも賞与水準は上昇傾向にあります。

「きまって支給する給与」に対する賞与の割合(支給月数)は、どちらの規模も約1ヶ月分という水準です。月給の1ヶ月分が賞与の目安感として定着しているといえます。

ただし、これはあくまで全産業の平均。業種によって差は非常に大きいため、「うちの業種の平均はどうか」を確認することが重要です。


業種別に見ると差は大きい

業種ごとのデータを見ると、同じ「中小企業」でも賞与水準は大きく異なります。

支給額が高い業種(5〜29人)

  • 化学・石油・石炭製造業:約65.8万円
  • 電気・ガス・熱供給等:約64.8万円
  • 設備工事業:約52.8万円
  • 情報通信機械器具製造業:約51.1万円

支給額が低い業種(5〜29人)

  • 飲食店:約3.6万円
  • 飲食料品小売業:約7.8万円
  • 各種商品小売業:約4.8万円

飲食店と化学製造業を比べると、実に18倍以上の差があります。「中小企業の平均28.4万円」という数字だけで自社を判断するのは危険です。必ず同業種・同規模のデータと照らし合わせることが大切です。

30〜99人規模でも傾向は似ています。建設業の総合工事業が約83.6万円と突出して高く、飲食店の約4.2万円とは約20倍の差があります。


支給事業所数割合から見えること

「支給事業所数割合」とは、全事業所のうち夏季賞与を支給した事業所の割合です。

2025年の数字を見ると:

  • 5〜29人の事業所:70.3%(2年連続70%台)
  • 30〜99人の事業所:90.8%(2010年以降、初めて90%超)

小規模の事業所でも7割が夏季賞与を支給しているという現実。逆にいえば、賞与を支給していない会社は3割程度存在するということです。

ただし業種差もあります。設備工事業や鉄鋼業・パルプ紙製造業などは100%近い支給率がある一方、飲食料品小売業は38%程度、娯楽業は73%程度と、業種によってまちまちです。

「うちの業種では賞与を出しているのが当たり前か、例外か」を知っておくだけで、従業員への説明や採用時のアピール方法が変わります。


「賞与を給与に振り替える」動きとは

最近、注目している動きがあります。賞与として支給していた原資の一部または全部を、月々の給与に組み込む企業が増えているのです。

背景にあるのは、従業員側のニーズの変化です。「年2回まとめてもらうより、毎月の給与を上げてほしい」という声が、特に若い世代を中心に増えています。

また、会社側にとっても「業績に関わらず固定的に出すなら、最初から月給に組み込んでいい」という判断もあります。

ただし、この振り替えには注意点もあります。

  • 賞与には社会保険料がかかる(年2回支給の場合)が、月給に組み込むと毎月の社会保険料計算に影響する
  • 一度月給を上げると下げにくい(降格・減給は法的に制限がある)
  • 業績連動の要素がなくなることで、従業員のモチベーション設計が難しくなる場合がある

「流行だから」ではなく、自社の業態・従業員層・経営状況に合った選択をすることが大切です。


採用・定着の観点から賞与を考える

採用定着士として、私は賞与を「報酬制度」の文脈だけでなく、「承認と動機づけ」の道具としても捉えています。

賞与は、単なるお金の移動ではありません。うまく設計すれば、「この半年、頑張った結果がここに出た」という達成感や、「会社が自分を評価してくれている」という実感につながります。

一方で、支給金額が曖昧で毎年なんとなく決まっているだけだと、従業員にとって「どうせ変わらない」という諦め感が生まれやすくなります。

採用においても、賞与の存在は選考を左右する要素のひとつです。「賞与あり」と記載できるかどうかで、応募者数に差が出ることは珍しくありません。特に正社員採用では、賞与の有無・目安月数は求職者が重視するポイントです。

「出せる金額の中でどう評価に連動させるか」「賞与の意味を従業員にどう伝えるか」を設計することが、採用・定着の強化につながります。


よくある質問

Q. 賞与支給額の基準はどうやって決めればいいですか?

A. 大きく分けて「一律支給」「月給連動(〇ヶ月分)」「業績連動」「評価連動」の4パターンがあります。中小企業では「月給の〇ヶ月分」で一律支給というケースが多いですが、業績や個人の貢献度に連動させることで、モチベーションの設計もできます。どのパターンが自社に合うかは、会社の規模・業種・評価制度の整備状況によって異なります。

Q. 業績が悪い年でも賞与を出した方がいいですか?

A. 無理に出す必要はありませんが、「出さない場合の説明」が非常に重要です。支給しない・減額するなら、理由を丁寧に伝えることが定着につながります。また、就業規則で「会社の業績により支給しない場合がある」と明記しておけば、法的なトラブルを防ぐことができます。何も決めていないまま突然ゼロにすると、大きな不満や離職につながります。


まとめ

今回のポイントをまとめます。

  • 2025年夏季賞与は3年連続前年比プラス(5〜29人:約28.4万円、30〜99人:約37.8万円)
  • 業種間の差は非常に大きく、全産業平均だけで自社を判断しないことが重要
  • 30〜99人規模では90.8%が支給(2010年以降初の90%超)
  • 賞与を給与に振り替える動きもあるが、メリット・デメリットを理解した上で判断が必要
  • 賞与は「承認と動機づけの道具」として活用することが採用・定着につながる

「うちの賞与水準でいいのかな」「そもそも賞与の設計が曖昧なまま来てしまった」という方は、ぜひ当社にご相談ください。業種・規模・会社の状況に合った賞与制度の整備を一緒に考えます。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路播州採用定着研究所
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