復帰する選手がいる。姫路の中小企業、社員の職場復帰は設計できていますか

2026年5月16日



今日発表されたW杯日本代表26人の中に、負傷から復帰途上の選手が含まれていました。

森保監督はこう語りました。
「W杯までに復帰のめどが立っている。プレーできる計算の上で選んだ」

感覚や勢いではなく、状態の見極めと計画があって初めて「迎え入れる」判断をしている。
このプロセスを聞いて、私は職場復帰支援のことを考えました。

社員が怪我や病気から戻ってきたとき、あなたの姫路の会社はちゃんと「迎え入れる準備」ができていますか?


目次

  1. 「復帰後」が一番大事で、一番準備されていない
  2. よくある2つの失敗パターン
  3. 職場復帰を成功させる3つのステップ
  4. 就業規則・休職規程の整備も忘れずに
  5. メンタル不調からの復帰に特有の注意点
  6. 「戻れる場所がある」が、人を強くする
  7. よくある質問
  8. まとめ

「復帰後」が一番大事で、一番準備されていない

病気や怪我、メンタル不調による休職・療養。
中小企業でも、こういったケースはじわじわと増えています。

多くの経営者は「休んでいる間どうするか」に意識が向きがちです。
でも、実はもっと重要なのが「復帰後」です。

厚生労働省のデータでも、精神疾患で休職した社員の再休職率は高く、適切な復帰支援がなければ2年以内に再発するケースが少なくないとされています。
姫路の中小企業でも「一度戻ってきたのに、また休んでしまった」という相談は決して珍しくありません。


よくある2つの失敗パターン

現場でよく見る失敗のパターンが2つあります。

① 「元通り」を急ぎすぎるパターン

休職中は「ゆっくり休んでね」と言っておきながら、復帰初日からいきなり以前と同じ業務量を求めてしまう。
「戻ってきたんだから、もう大丈夫だろう」という思い込みが原因です。
本人も「迷惑をかけてしまった」という焦りから無理をしがちで、これが再発を招きます。

② 「気を遣いすぎ」で疎外感を生むパターン

逆に、「無理させたら再発するかも」と過度に気を遣い、本人に仕事を与えなかったり、重要な会議から外し続けたりする。
本人にとっては「役に立てていない」「居場所がない」という疎外感につながり、これもまた離職や再休職の引き金になります。
どちらも善意からくる対応ですが、「計画」がないことが問題です。


職場復帰を成功させる3つのステップ

今回のW杯選出には、明確な段階がありました。
「復帰のめどが立った」→「プレーできる計算をした」→「選出を決めた」
職場復帰支援も、まったく同じ発想が必要です。

ステップ① 復帰前の「面談」と「状態の確認」

復帰の準備ができているかどうかを、主治医の診断書だけで判断しないことが大切です。
本人との面談を設けて、「どんな業務なら今できそうか」「どんな配慮があると助かるか」を丁寧に聞く。
「大丈夫です」という言葉を鵜呑みにせず、状態を一緒に確認する姿勢が信頼につながります。

可能であれば主治医や産業医からの情報も参考にしながら、「今できること・できないこと」を整理することをお勧めします。

ステップ② 「段階的な復帰」のプランを作る

いきなり以前と同じ業務・同じ時間に戻すのではなく、段階的に業務量を増やしていくプランを事前に作ることが理想的です。

  • 最初の2週間:時短勤務で軽作業(メールチェック・資料整理など)
  • 次の2週間:定時まで勤務、通常業務の一部を担当
  • その後:通常業務へ段階的に移行

本人・会社・医療の三者で共有しておくことで、「どこまで配慮するか」の基準が明確になります。
中小企業では「三者」が難しい場合もありますが、少なくとも本人と会社で書面に残して共有するだけでも効果は大きいです。

ステップ③ 復帰後の「フォローアップ面談」

復帰したら終わり、ではありません。
復帰後1週間、1ヶ月、3ヶ月といった節目で、短時間でも面談の場を設けることが再発防止に非常に効果的です。
「調子はどうですか」という一言で十分です。
本人が「ちゃんと見てもらえている」と感じられることが、安心して働き続ける土台になります。


就業規則・休職規程の整備も忘れずに

職場復帰支援を「仕組み」として機能させるには、就業規則や休職規程の整備が土台になります。

確認しておくべきポイントはこの3点です。

  • 休職期間の上限は明確か(勤続年数に応じた設定が一般的)
  • 復職の判断基準が規定されているか(診断書の提出・面談実施など)
  • 復職後のフォロー期間・軽減措置が記載されているか

規程がない状態では、「どこまで休ませればいいのか」「復帰させる義務があるのか」の判断がその都度バラバラになります。
これが会社と社員の間のトラブルにつながるケースも少なくありません。
「うちは小さいから大丈夫」ではなく、小さい会社だからこそ規程が必要です。一人ひとりへの対応が属人化しやすいからです。


メンタル不調からの復帰に特有の注意点

身体的な怪我・病気と、メンタル不調からの復帰では、対応の仕方が異なります。

メンタル不調の場合に特に気をつけてほしいポイントがあります。

「元気そうに見える」を鵜呑みにしない

復帰直後は「頑張らなければ」という気力が先行し、一時的に元気に見えることがあります。
この時期に負荷をかけすぎると、数週間後に急激に悪化するパターンがあります。
見た目の元気さではなく、「段階的なプラン通りに進んでいるか」を基準にしてください。

発症前と同じ環境・人間関係に戻さない配慮

メンタル不調の原因が職場環境や人間関係にある場合、同じ状況に戻すと再発リスクが高まります。
配置転換や担当業務の変更が難しい場合でも、直接の上司とのコミュニケーションを工夫するなど、できる範囲での環境調整が重要です。


「戻れる場所がある」が、人を強くする

怪我をした選手が、懸命にリハビリを続けられるのはなぜか。
「復帰したら使ってもらえる」という信頼と、「戻る場所がある」という安心感があるからだと思います。

これは会社も同じです。
「怪我や病気で休んでも、ちゃんと戻れる」という安心感がある職場は、社員にとって働き続けたい職場です。

逆に、「休んだら居場所がなくなるかもしれない」という不安がある職場は、軽い不調でも隠して無理をする文化が育ちます。
それが重篤な状態につながるリスクは、決して小さくありません。


よくある質問

Q. 復帰させたいけど、仕事を与えすぎるのも心配です。どう判断すれば?

A. 最初は「本人が自分でコントロールできる仕事」から始めることをお勧めします。締め切りが柔軟で、他の人への影響が少ない業務(データ整理・社内資料作成など)が適しています。「物足りないくらいでちょうどいい」という感覚で最初の2週間を設計し、徐々に増やしていきましょう。

Q. 就業規則に休職・復職規程がない場合、今からでも間に合いますか?

A. 間に合います。むしろ「問題が起きてから整備する」より、今整えておく方がずっといいです。就業規則の変更には労働者代表の意見聴取と労働基準監督署への届け出が必要ですが、手続きは難しくありません。当社でも休職・復職規程の整備サポートを行っています。気になる方はお気軽にご相談ください。


まとめ

職場復帰支援は、ルールを整えるだけでは機能しません。
「戻ってきていいよ」という言葉と雰囲気、そして具体的な段階的プラン。
仕組みと対話の両方が揃って、はじめて「復帰できる職場」になります。

W杯日本代表が「プレーできる計算の上で」選手を迎え入れたように、あなたの会社も計画を持って社員を迎え入れてください。
その一手間が、社員の安心と会社の安定につながります。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。


筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年5月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路播州採用定着研究所
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