「求人を出しても、いい人が来ない。」「採用できても、すぐに辞めてしまう。」——姫路の採用定着士として100社以上の採用支援をしてきた中で、こうした悩みを持つ経営者に何度もお会いしてきました。
採用がうまくいかない原因を「景気のせい」「人手不足のせい」と外部に求めてしまうと、何も変わりません。採用が安定しない会社には、共通する「落とし穴」があります。そしてその落とし穴は、仕組みを整えることで必ず防ぐことができます。
本記事では、求人を出す前の段階から入社後の定着まで、採用の全プロセスにわたる5つの落とし穴と、その解決策を一気にお伝えします。
目次
目次
- 落とし穴①:採用の「バケツ」に穴が開いたまま水を注いでいる
- 落とし穴②:候補者が会社を検索したとき、何も出てこない
- 落とし穴③:面接が「尋問」になっている
- 落とし穴④:内定を出した後、何もしていない
- 落とし穴⑤:入社後90日間のフォローがない
- 5つの落とし穴に共通する「根本原因」
- よくある質問
- まとめ
落とし穴①:採用の「バケツ」に穴が開いたまま水を注いでいる
採用活動を「バケツに水を注ぐ作業」に例えると、わかりやすくなります。求人広告を出して応募者を集めることが「水を注ぐこと」だとすると、バケツに穴が開いたままでは、いくら水を注いでも溜まりません。
採用が安定しない会社の多くは、このバケツの穴——つまり「応募者が途中で抜けていく場所」——を把握していません。
穴が開きやすいのは、主に4つのポイントです。
- 求人票の段階:応募したいと思わせる情報が不足している
- 面接の段階:候補者が「この会社はない」と判断して辞退する
- 内定後の段階:フォローがなく、他社に気持ちが流れる
- 入社後の段階:フォロー不足で早期退職が起きる
「応募が少ない」と感じているなら、まず自社のバケツのどこに穴が開いているかを確認することが先決です。穴を塞がないまま求人費を増やしても、損失が増えるだけです。
また、採用がうまくいかない会社のもう一つの特徴が「反応型採用」です。人が辞めてから慌てて求人を出す、採用できたら安心して次の採用を考えない——このような場当たり的な採用では、常に人手不足に追われ続けます。
採用を安定させるには、求人票・面接・内定後・入社後のそれぞれのフェーズを「仕組み」として設計し、誰がやっても同じ品質で回せる状態を作ることが必要です。
落とし穴②:候補者が会社を検索したとき、何も出てこない
求人広告を見て「気になる」と思った候補者が、次にすることを知っていますか?
ほぼ全員が、スマホで会社名を検索します。
会社のホームページ、Googleのクチコミ、SNSのアカウント、代表者の顔と人柄——こうした情報を候補者は応募前に必ず確認します。そこで何も出てこなかったとき、あるいはホームページが古くて情報が少なかったとき、候補者は「この会社は大丈夫か?」と感じ、応募をやめます。
候補者が検索で確認したいのは、主に以下のことです。
- 社長はどんな人か(考え方・人柄・実績)
- 職場の雰囲気はどうか(スタッフの笑顔・日常の様子)
- 会社として信頼できるか(事業内容・実績・取引先)
- 働いている人はどう感じているか(口コミ・声)
これらの情報が揃っていれば、候補者は「ここに応募してみよう」と思います。逆に何もなければ、「よくわからない会社には応募しない」という判断になります。
求人広告に費用をかける前に、まず自分でスマホで自社名を検索してみてください。候補者の目に映る「自社の第一印象」を、今すぐ確認することが出発点です。
対策は高コストなものでなくて構いません。社長のFacebook・Instagram・ブログを定期的に更新する、Googleビジネスプロフィールを整える、ホームページに「代表メッセージ」と「スタッフ紹介」を加える——こうした積み重ねが、検索した候補者に「この会社は信頼できそう」という印象を与えます。
落とし穴③:面接が「尋問」になっている
面接は「人を選ぶ場」だと思っていませんか?
それは半分正解で、半分間違いです。面接は「会社が人を選ぶ場」であると同時に、「候補者が会社を選ぶ場」でもあります。この認識が抜けていると、面接で候補者の気持ちが離れてしまいます。
中小企業の面接でよくある3つの失敗を紹介します。
① 会社の説明をしない
「候補者が会社のことを調べてくるのは当然」と思って、面接中に会社の説明をほとんどしないケースがあります。しかし候補者が調べられる情報には限りがあります。「実際のところどうなのか」を面接で聞かせてもらえると期待している候補者は多いのです。
② 候補者の質問時間を取らない
「何か質問はありますか?」と形式的に聞くだけで、実質的な質問時間がほとんどないケース。候補者は「聞きたいことが聞けなかった」という消化不良感を抱えたまま帰ることになります。
③ 雰囲気が硬すぎる
緊張した雰囲気の中で行われる面接では、候補者も自然体を見せられません。「職場の雰囲気が伝わらなかった」という印象を与えてしまいます。
改善のポイントは、面接の時間の使い方を変えることです。会社・仕事の説明に時間を使う、候補者の話をしっかり聞く、候補者の疑問に正直に答える(デメリットも含めて)——このような姿勢が、候補者に「この会社で働きたい」という気持ちを生みます。
面接が終わったとき、候補者が「この会社のことがよくわかった」「ここで働くイメージが持てた」と感じれば、内定辞退は大幅に減ります。
落とし穴④:内定を出した後、何もしていない
内定を出した後、次の連絡は「入社日の確認」だけ——そんな会社は要注意です。
内定をもらった候補者は、決して安心しているわけではありません。頭の中ではこんなことを考えています。
- 「本当にこの会社でよかったのか」
- 「入ってみて、聞いていた話と違ったらどうしよう」
- 「職場の人たちとうまくやっていけるか不安」
- 「もっと良い会社があるかもしれない」
「内定をもらった=入社を決めた」ではありません。このタイミングで会社側から何もアクションがなければ、候補者の不安は膨らみ続けます。そして他社から好条件の内定が届いたとき、「やっぱりあちらにします」という判断につながります。
内定後〜入社前にやるべきことは4つです。
- ① 内定通知と同時に「歓迎の気持ち」を伝える:「一緒に働けるのを楽しみにしています」という言葉を、電話や対面で直接伝える
- ② 内定から入社まで最低1〜2回は連絡を取る:「準備は順調ですか?」「何か不安なことはありますか?」この一言が候補者の不安を大きく減らす
- ③ 入社前に職場を見せる機会を作る:入社前に職場を見学し、一緒に働くメンバーと話す機会を設ける
- ④ 入社後の流れを事前に共有する:入社初日の流れ、最初の1週間のスケジュール、持ち物などをまとめて事前に渡す
内定辞退の本当の原因は「他社の条件が良かったから」ではなく、「この会社への不安が解消されなかったから」であることがほとんどです。内定を出した後こそ、丁寧なフォローが必要です。
落とし穴⑤:入社後90日間のフォローがない
採用した人が3ヶ月で辞めた——こうした経験を持つ経営者から、「採用を失敗したのかな」「向いていなかったのかも」という言葉をよく聞きます。
しかし、早期退職の原因を「本人の資質」に求めてしまうと、同じことが繰り返されます。早期退職の多くは、入社後のフォロー体制がなかった——つまり、会社側の仕組みの問題です。
入社後90日以内の退職が多い理由は、この期間が新入社員にとって最もストレスが高い時期だからです。新しい職場・新しい人間関係・新しい仕事のやり方——すべてが「初めて」の状態で、多くのことを同時に覚えなければなりません。その中で感じる疲弊感・孤独感・期待とのギャップが、退職の引き金になります。
入社後90日間は、3つのフェーズで設計することをお勧めします。
フェーズ1:入社〜30日(安心感を作る)
この時期のゴールは「この場所は安全だ」と感じてもらうことです。入社初日の丁寧なオリエンテーション、週1回の1on1、業務の優先順位・評価基準の明示、チームへの紹介サポートが有効です。
フェーズ2:31日〜60日(自信を育てる)
少しずつ仕事に慣れてくる時期。「できた体験」を積み重ねることが重要です。できたことを具体的に言語化してフィードバックし、30日を振り返り、60日の目標をすり合わせます。
フェーズ3:61日〜90日(定着の確認)
「この会社でやっていける」という自己効力感が芽生え始める時期。90日間の振り返り面談を正式に実施し、今後のキャリアイメージを共有します。
この3フェーズをあらかじめ設計してマニュアル化しておけば、担当者が変わっても一定のクオリティで定着支援ができます。
「新入社員のフォローは大事だとわかっている。でも、日々の業務に追われてできていない」——こういう声もよく聞きます。これは意識の問題ではなく、仕組みがないからです。1on1の日程を入社前に先入れしておく、振り返り面談のテンプレートを作っておく、チェックリストで「いつ・何をするか」を明文化しておく——仕組みがあれば、忙しくても「やること」が明確になります。
5つの落とし穴に共通する「根本原因」
ここまで5つの落とし穴を見てきました。表面的な症状はそれぞれ違いますが、根本原因は一つです。
採用を「仕組み」として設計していないこと。
うまくいっている会社は、次のことを仕組みとして持っています。
- 求人票の書き方・更新頻度のルール
- 面接の流れ・質問・評価基準のテンプレート
- 内定後フォローのスケジュールとチェックリスト
- 入社後90日間のオンボーディング設計
これらが整っていれば、採用担当者が変わっても、社長が忙しくても、一定の品質で採用・定着のサイクルが回ります。
また、仕組み(ハード面)と同時に、コミュニケーション(ソフト面)も大切です。マニュアルがあっても、上司の接し方が冷たければ定着しません。評価や業務の見通しが明確でも、誰も声をかけてくれなければ孤立します。ハードとソフトの両輪で回すことで、「採用した人が長く活躍してくれる会社」が出来上がります。
採用して終わりではありません。定着するまでが採用です。
よくある質問
Q. 採用の仕組み化といっても、何から手をつければいいですか?
A. まず「自社のどこで候補者が抜けているか」を把握することから始めてください。応募数・面接通過率・内定承諾率・入社後3ヶ月の定着率——この4つの数字を出すだけで、バケツの穴の場所がわかります。穴が複数ある場合は、最も大きな穴(一番候補者が抜ける場所)から優先的に手を打ちます。
Q. 小さな会社でも仕組み化できますか?
A. 従業員数に関係なく仕組み化は可能です。むしろ人数が少ない会社こそ、1人の採用・1人の退職が経営に直結するため、仕組み化の効果が大きいです。最初は「面接の流れをA4一枚にまとめる」「1on1の日程を入社前に入れる」など、小さな一手から始めることをお勧めします。
Q. 早期退職が続いています。まず何をすればいいですか?
A. 直近で辞めた方に「退職の理由」を丁寧に聞いてみてください。「次の採用に活かしたいので、差し支えなければ教えてください」と伝えれば、多くの場合は答えてもらえます。その答えに、自社の採用・定着の「バケツの穴」の場所が隠れています。退職者のフィードバックは、改善のための最重要情報です。
まとめ
採用が安定しない会社に共通する5つの落とし穴を振り返ります。
- ① 採用のバケツに穴が開いたまま求人費をかけている
- ② 候補者が検索しても、会社の情報が出てこない
- ③ 面接が一方的な尋問になり、候補者の気持ちが離れる
- ④ 内定後にフォローがなく、入社前に辞退される
- ⑤ 入社後90日間のフォロー体制がなく、早期退職が起きる
どれか1つを改善するだけでも、採用の結果は変わります。そして5つすべてを仕組みとして設計できれば、「採用が安定しない」という悩みから解放されます。
採用して終わりではありません。定着するまでが採用です。
「自社のどこに穴があるか確認したい」「採用の仕組みを一緒に整えたい」という方は、ぜひ当社にご相談ください。
筆者プロフィール
泉 正道(Masamichi Izumi)|姫路の社会保険労務士
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年6月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。
姫路を拠点に、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する伴走支援を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。
姫路の経営者様はもちろん、遠方の方もオンライン対応可能ですので、お気軽にご相談ください。
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