「馬鹿な二代目が会社を潰す」本当の理由と、創業者が知っておくべき覚悟【姫路の特定社労士・採用定着士が解説】



「馬鹿な二代目が会社を潰す」

こう書くと、過激に聞こえるかもしれません。
でも、多くの中小企業を見てきた立場として、これは事実です。

私はこれまで、二代目・三代目の社長と30名以上お会いしてきました。
現在の顧問先にも、二代目・三代目が経営する会社が10社あります。

そして、そのほとんどは、魅力的で、努力もしている人たちです。
すべての後継者が問題を抱えているわけではありません。むしろ、素晴らしい二代目・三代目の方が圧倒的に多い。

ただ、会社を弱体化させていく二代目には、驚くほど共通したパターンがあります。
そして、その問題の根っこは、二代目本人ではなく、創業者(親)側にあることが多い。

今回は、私が現場で実際に経験した事例も交えながら、「後継者が会社を潰すメカニズム」と「創業者が本当にすべきこと」をお伝えします。


目次

  1. 二代目が会社を潰すのは「経営能力」の問題ではない
  2. 実際にあった話——ある会社の二代目に何が起きたか
  3. 「裸の王様」が生まれるメカニズム
  4. 良い二代目に共通すること
  5. 創業者(親)が本当にすべきこと
  6. 事業承継は「手続き」ではなく「人間形成」の問題
  7. まとめ
  8. よくある質問

二代目が会社を潰すのは「経営能力」の問題ではない

「あの二代目は経営のセンスがない」という言葉を聞くことがあります。

たしかに、財務の知識がない、マーケティングが苦手、といった能力面の課題はあります。
でも、それは学べばいい話です。

会社を本当に危機に追い込むのは、「人間としての姿勢」の問題です。

私がこれまで見てきた、組織を弱らせる二代目に共通していたのは、以下のような行動パターンでした。

  • 約束を守らない
  • 人の話を聞かない(聞いているふりをする)
  • 都合が悪いことから逃げる
  • 責任を他人に押し付ける
  • 「自分だけは特別」という感覚がある
  • 契約書・重要書類を真剣に読まない(読めない)

これらは、経営者以前に、社会人・大人としての基本です。

こうした姿勢が積み重なることで、社員・取引先・支援者の信頼が少しずつ失われていく。
そして気づいた時には、もう手遅れになっている。


知人の社労士から聞いた話

これは、私の知人社労士から直接聞いた話です。

A社は、ある地域の中小企業です。
会長(創業者)は「息子に経営を経験させたい」という思いから、グループ会社B社をつくってあげて、社長に実の息子(以下、C氏)を据えました。
その知人社労士は、長年A社の支援に入っていました。

ある時、C氏が「採用や職場の管理体制を整えたい」と言い出し、コンサルティング契約を結ぶことになりました。
契約前には丁寧に説明を行い、「御社側にもやっていただくことがあります。丸投げはできません」と明確に伝えた上で、C氏本人も納得して契約したといいます。

しかし支援が始まると——

  • アドバイスをまともに聞かない
  • 管理体制の整備を「面倒くさい」と後回しにする
  • 情報共有を求めても「それもやるんですか?」と不満を示す
  • うまくいかないと「思ったより大変だ」と言い出す

そして数ヶ月後、C氏は「やっぱりやめたい」「丸投げできると思っていた」と言い出しました。

知人社労士が「契約の通り支援は続けます」と伝えると、C氏は自分では話し合おうとしませんでした。
代わりに、周囲の関係者を通じて、間接的に「なんとかしてほしい」と働きかけてきたといいます。

まるで幼い子どもが、お母さん・お父さんに甘えて泣き言を言っているような状況です。

しかも後になってわかったのは、C氏が契約内容を周囲に正確に伝えていなかった、ということ。
「いつでも気軽にやめられる」「自分は聞いていない」といった話を周囲にしていたようです。
契約書をきちんと読んでいなかった(あるいは読む気がなかった)ことは、やり取りを通じて明らかになりました。

最終的に、C氏は会長に「あの社労士との契約を切りたい」と訴え、顧問契約も含めてすべて解除となりました。

「最もショックだったのは、会長の反応だった」と知人は言っていました。

その会長はかつて「息子にいろいろ教えてやってほしい」と言っていた。
だから知人は、厳しいことも言い続けた。逃げることを許さなかった。
それが「後継者を育てる」ということだと信じていたから。

しかし会長が最後に選んだのは、「経営者育成」ではなく「息子かわいさ」でした。

これが、事業承継の現実のひとつです。


「裸の王様」が生まれるメカニズム

この話で最も怖いのは、C氏が「自分は被害者だ」と本気で信じていることです。

なぜそうなるのか。

社員には生活があります。
取引先も関係を壊したくありません。
家族も本人を傷つけたくありません。
社内の古株も、社長の息子に本音は言いません。

結果として、誰も本当のことを言わなくなります。

知人によれば、その会社の周囲の支援者からも「会長にはあまり余計なことを言わない方がいい」という雰囲気があったといいます。
ここまで来ると、もはや「お世辞」と「機嫌取り」しか入ってこない。

それでも二代目は「自分はうまくやれている」と信じて経営を続けます。
これが、「裸の王様」が生まれるメカニズムです。

耳の痛い話をしてくれる人を遠ざけ、機嫌を取る人(イエスマン)ばかりを周囲に置いた瞬間、成長は止まります。
そしてその習慣は、親(創業者)がつくります。


良い二代目に共通すること

誤解のないように書きますが、私はこれまで、素晴らしい二代目経営者にもたくさん出会ってきました。

彼・彼女らに共通しているのは、経営の知識やセンスではありません。

  • 挨拶が自然にできる
  • 約束を守る(守れない時は事前に連絡する)
  • 叱られても言い訳をしない
  • 「自分にはまだわからないことがある」と知っている
  • 周囲への感謝が言葉と態度に出ている
  • 「この会社は自分が一から作ったわけではない」という認識がある

これは、難しいことではありません。
ただ、「親が徹底して教えてきたかどうか」の差です。


創業者(親)が本当にすべきこと

息子や娘に会社を継がせるなら、経営を教える前に教えるべきことがあります。

  • 挨拶(礼儀)
  • 素直さ(人の話を聞く力)
  • 約束を守ること
  • 責任を引き受けること
  • 周囲への感謝
  • 「この売上・この社員は、あなたが一から作ったわけではない」という事実
  • 「経営とは何か」という本質的な問い

そして創業者自身にも、覚悟が必要です。

それは——後継者に本当のことを言ってくれる人を、意識的に近くに置くという覚悟です。

顧問税理士、社労士、コンサルタント、同業者。
誰でもいいです。

「耳の痛いことを言ってくれる人」を置かずに、「機嫌を取ってくれる人」だけを周囲に置いた瞬間、後継者の成長は止まります。

そしてもうひとつ、大切なことがあります。

それは、「後継者が本音を言える環境」を創業者自身がつくれているか、という問いです。

「うちの息子は何でも話してくれる」と思っている創業者ほど、実際には後継者が本音を飲み込んでいることが多い。
人は、権力を持つ人間(特に親)に対して、本音をなかなか言えないものです。

だからこそ、「親以外の第三者」が後継者と向き合う時間が必要です。


事業承継は「手続き」ではなく「人間形成」の問題

事業承継というと、株式の移転、相続税対策、経営計画の引継ぎ——そうした「手続き」が注目されます。
もちろん、それらは大切です。

でも、私が現場を見てきた結論として言えることは、

「仕組みが整っていても、人間が育っていなければ会社は持たない」

ということです。

逆に言えば、人間として育った後継者がいれば、仕組みは後からいくらでも整えられる。

承継の手続きを整えること。
後継者が本音を言える対話の文化をつくること。
耳の痛い話を受け取れる関係性をつくること。

この「仕組み」と「対話」の両輪が回っているかどうか。

ぜひ、今一度振り返ってみてください。


あなたは、お子さんに何を残したいですか?

ここで、創業者の方に正直に問いかけたいと思います。

あなたは、お子さんに何を残したいですか?

お金ですか。
それとも、自分の力で生きていける力ですか。
周囲から信頼され、好かれる人間性ですか。

あなたは、会社をどうしたいですか?

顧客や従業員から尊敬される会社にしたいですか。
それとも、経営陣だけが潤えばいい会社でいいですか。

有名な話があります。

無人島でお腹が減っている人に、魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか——。
魚を与えれば、その日は助かります。
でも釣り方を教えれば、一生食べていける。

後継者育成も、まったく同じです。

「困ったら助ける」「息子がかわいい」という気持ちは、親として当然のものです。
でも、それを経営の場でやり続けると、子どもは永遠に「一人で立てない人間」になります。

本当に子どもを愛しているなら、厳しくできるはずです。
本当に会社の未来を思っているなら、「かわいさ」より「覚悟」を選べるはずです。


まとめ

「馬鹿な二代目が会社を潰す」——この言葉の本当の意味は、「二代目を馬鹿に育ててしまった創業者が、会社の未来を閉じてしまう」ということです。

厳しい言い方ですが、これが現場から見えている現実です。

後継者育成とは、「経営スキルの教育」ではなく、「人間形成のプロセス」です。
それは一朝一夕にはできません。しかし、今日から変えられることもあります。

  • 後継者に「本当のことを言ってくれる人」を近くに置いているか
  • 後継者が「逃げても許してもらえる」環境になっていないか
  • 創業者自身が、息子・娘に対して「厳しい現実」を伝える覚悟を持っているか

後継者育成・事業承継について不安をお持ちの創業者様は、ぜひ当社にご相談ください。
「仕組みと対話の両輪」を整えるための伴走支援を行っています。


よくある質問

Q. 後継者に「厳しいことを言ってくれる人」とは、具体的に誰がいいですか?

A. 社外の第三者が最も機能します。顧問社労士・中小企業診断士・経営コンサルタントなどが代表的です。重要なのは、社長(親)やお子さんに対して「配慮はするが、遠慮はしない人」であること。社内の人間や、創業者と長い付き合いの人は、どうしても本音が言いにくくなります。意図的に「外の目」を入れることが、後継者育成の質を上げます。

Q. 後継者が「誰かに任せれば動いてくれる」と思い込んでいる場合、どう理解させればいいですか?

A. この思い込みは、過去に「任せれば誰かがやってくれた」体験から来ることがほとんどです。まずは「自分が動かなければ何も動かない場面」を意図的に作ることが大切です。ただし、創業者が直接言うと反発を招きやすいため、第三者を介した「経験学習」の設計がおすすめです。当社でもこうした後継者育成の伴走支援を行っていますので、気になる方はお問い合わせください。

筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)|姫路の社会保険労務士
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2026年6月現在、延べ100社以上の中小企業を支援。採用・定着・労務に関する相談は累計3,000件超(日々更新中)。

姫路を拠点に、中小企業の採用定着を「仕組み化(内製化)」する伴走支援を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路の経営者様はもちろん、遠方の方もオンライン対応可能ですので、お気軽にご相談ください。

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