【姫路の経営者必読】リーダーが逮捕されたとき、あなたの会社は動けますか?



2026年5月25日、読売ジャイアンツの阿部慎之助監督(47)が、娘への暴行疑いで現行犯逮捕されました。口論の末に暴力をふるったとして、警視庁が動いた。球団は「暴力は許されない。進退を含め処分を検討する」とコメント。翌朝には釈放されましたが、その後の対応は今も注目を集めています。

「単なる親子ゲンカでしょ?」「有名人の話だから、一般人には関係ない」と思われた方、少し待ってください。
これは、あらゆる会社に起こり得る話です。

中小企業でも、こんな場面はあり得ます。会社の幹部が飲酒運転で逮捕された。営業部長が横領で書類送検された。現場リーダーがSNSのトラブルで逮捕された。そのとき、あなたの会社はどう動きますか?

「就業規則に書いてある」——本当ですか? 逮捕後の出勤停止から懲戒処分の判断基準まで、しっかり整備できている会社は思いのほか少ない。今日は、そのリスクと備え方を一緒に考えます。


目次

  1. リーダーが逮捕されたとき、会社はどう動くべきか
  2. 就業規則に「逮捕・起訴条項」はありますか?
  3. 「逮捕=即解雇」はなぜNGなのか
  4. 仕組みと文化、両輪で整えて初めて組織は守られる
  5. よくある質問
  6. まとめ

リーダーが逮捕されたとき、会社はどう動くべきか

突然の逮捕報道。多くの経営者は「何から手をつければいい?」と頭が真っ白になります。そのとき慌てないために、基本的な対応フローを押さえておきましょう。

① まず事実確認をする

逮捕の報道があっても、すぐに懲戒処分をしてはいけません。まず確認すべきは「どんな容疑で」「社外での出来事か社内での出来事か」「本人から説明を得られる状況か」の3点です。報道だけを信じて動くと、後で誤りだった場合のリスクを会社が負うことになります。

② 出勤停止(自宅待機)を命じる

逮捕・起訴後の本人を、そのまま職場に出勤させることは現実的ではありません。他の従業員への影響や会社の信用を守るため、就業規則の規定に基づき自宅待機を命じます。このとき、賃金をどう扱うかも就業規則に定めておく必要があります。「有給か」「無給か」「判断はその都度か」——曖昧なままでは後でトラブルの元になります。

③ 社内調査・事実確認を進める

刑事捜査と並行して、会社としての調査を進めます。特に業務との関連(横領・情報漏洩など)がある場合は、証拠保全も含めて慎重に動く必要があります。本人への聞き取りも、弁護士への相談も、早めに動くほど選択肢が広がります。

④ 懲戒処分の判断をする

起訴・有罪判決が確定した段階で、懲戒処分を判断します。処分の重さは「会社への影響の度合い」「本人の態度」「前歴の有無」などを総合的に考慮します。感情で動かず、就業規則の規定に沿って判断することが、後の紛争を防ぎます。


就業規則に「逮捕・起訴条項」はありますか?

今すぐ自社の就業規則を開いてみてください。「逮捕」「起訴」という言葉はありますか?

実際には、こうした規定がない会社がとても多いです。「懲戒解雇の事由」に「刑事罰を受けたとき」とは書いてあっても、逮捕段階での出勤停止や賃金の取り扱いが書かれていないケースがほとんどです。これでは、いざというときに会社が動けません。

最低限、就業規則に盛り込んでおくべき内容はこれです:

  • 逮捕・起訴された場合の自宅待機(出勤停止)に関する規定
  • 自宅待機中の賃金の取り扱い(有給・無給・会社が任意に判断するか)
  • 起訴・有罪確定後の懲戒処分の基準と手順
  • 業務上の犯罪(横領・情報漏洩など)が発覚した場合の対応
  • 報道・SNSへの対応に関する方針

「うちは零細だから関係ない」と思っているなら、それが一番危険な状態です。従業員が5人でも10人でも、就業規則には逮捕条項が必要です。規定がないまま動くと、会社側の対応が「不当」と判断されるリスクが高まります。


「逮捕=即解雇」はなぜNGなのか

「逮捕されたんだから、即クビにしていいんじゃないの?」
こう思う経営者も多い。しかし、これは大きなリスクをはらんでいます。

逮捕は「有罪」ではない

日本では無罪推定の原則があります。逮捕はあくまで「容疑があるとして身柄を拘束した」段階です。起訴されても、裁判で有罪が確定するまでは「有罪」ではありません。この段階で懲戒解雇をすると、後に不起訴・無罪になった場合、不当解雇として訴えられるリスクがあります。

「プライベートの行為」は慎重な判断が必要

今回の阿部監督のケースは、自宅での家族間の出来事です。業務と直接関係のないプライベートの行為で解雇できるかは、「その行為が会社の信用や業務に与える影響」を考慮して判断します。業種・役職・影響の大きさによって結論は変わり、むやみに解雇すると不当解雇になり得ます。

処分は「段階的」「根拠が明確」であることが重要

就業規則に規定がない処分を下しても、法的に認められない場合があります。「書いてある根拠に基づいて、段階的に処分する」というプロセスが会社を守ります。感情的に動くことが、最大のリスクです。逮捕の報道を受けて焦る気持ちはわかりますが、冷静に手順を踏むことが結果的に会社を守ります。


仕組みと文化、両輪で整えて初めて組織は守られる

就業規則を整えることは「ハードの仕組み」を作ることです。でも、それだけでは不十分です。

今回のニュースで私が一番気になったのは「なぜ逮捕まで至ったのか」という背景です。口論の末に暴力が生じた——つまり、感情をコントロールできる状態になかったということです。強いプレッシャーの下で、出口のない状態に追い込まれていた可能性があります。

これは、職場のリーダーにも同じことが言えます。強いプレッシャーのもとでストレスをため込んでいるリーダーは、いつ職場で同様の問題を起こすかわかりません。パワハラ、過度な叱責、感情的な指示——これらは「逮捕」にはならなくても、職場を壊します。

ソフト面で大切な3つのこと

  • 管理職が本音を言える場をつくる:リーダーも人間です。「困ってる」「つらい」と言える関係性が、組織に余裕を生みます。1on1や定期面談を仕組みとして設けることが第一歩です。
  • 感情をコントロールするスキルを育てる:コーチングやアンガーマネジメントの研修は、現場リーダーにこそ必要です。「感情的にならない人」を採用するより、「感情と付き合えるスキル」を育てる方が現実的です。
  • 承認と対話の習慣をつける:定期的な1on1があると、問題が大きくなる前に気づけます。「最近どう?」の一言が、組織の地雷を早期に発見します。

就業規則(ハード)で守りを固め、対話と承認の文化(ソフト)で組織の土台をつくる。この両輪が揃って、初めて「何かあっても動ける会社」になります。どちらか一方では不十分です。


よくある質問

Q. 逮捕された従業員に自宅待機を命じる場合、給与は払わなければいけませんか?

A. 就業規則の定め方と、待機命令の性質によって異なります。会社命令による自宅待機の場合、会社都合なら休業手当(平均賃金の60%以上)が必要になるケースもあります。一方、「逮捕・起訴という本人の事情による待機」であれば、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されることもあります。この判断は事案ごとに異なるため、就業規則への明記と、事前の専門家確認が重要です。

Q. 就業規則に逮捕条項がない場合、今からでも追加できますか?

A. もちろんできます。就業規則はいつでも変更可能です。変更するには①内容を検討→②労働者代表への意見聴取→③労働基準監督署への届出、というステップが必要です。労働者に不利益な変更には合理的な理由と周知も求められます。社労士に相談しながら進めると、手続き漏れを防げます。


まとめ

今回の阿部監督逮捕のニュースを、「芸能・スポーツの話」で終わらせないでほしい。
「うちも同じことが起きたら動けるか?」を考えるきっかけにしてください。

  • 就業規則に逮捕・起訴時の規定があるか
  • 懲戒処分のプロセスが段階的に明確か
  • 管理職が感情的に追い詰められていないか
  • 本音を言える対話の場が日常的にあるか

仕組みを整えることは守りではなく、経営者としての愛情です。何かが起きてからでは遅い。今日、就業規則を一度開いてみてください。

「これって違法?」「トラブルになる前に相談したい」——そのタイミングが一番大事です。
姫路の中小企業の現場を知る社労士が、一緒に整理します。