「うちは定着を大事にしています」
採用面談でそう言える経営者は多い。
でも、毎年のように人が辞めていく。
カオナビHRテクノロジー総研が実施した調査では、中途採用において中小企業が最も重視するのは「定着」だという結果が出ています。大企業がスキルや即戦力を求める傾向が強いのに対し、中小は長く働いてくれることを最優先に挙げました。
これ自体は正しい方向性です。
問題は、「重視している」が「実践している」に変わっていないことです。
なぜ、定着を重視しているはずの会社で、人が辞め続けるのか。
今日は、その不都合な現実をそのまま書きます。
目次
「定着重視」はなぜ失敗するのか
「定着を重視している」という言葉は、採用面接でよく登場します。
しかし、それが「言葉」で終わっていることに、多くの経営者は気づいていません。
重視する、という状態は何もしていない状態と変わりません。
重要なのは、定着のための仕組みが実際に動いているかどうかです。
例えば、次のような問いに答えられますか?
- 入社後30日・90日・180日に、上司との1on1面談が設定されていますか?
- 評価基準が文書化され、全社員に共有されていますか?
- 新入社員の「仕事の不安」を聞く仕組みがありますか?
- 上司が「ありがとう」「よくできた」と言葉にかける文化がありますか?
これらが「ある」と言い切れる会社は、実はそう多くありません。
「大事にしている」という意識はあっても、それが仕組みとして回っていないのが実情です。
意識は変えられません。でも仕組みは設計できます。
ここを理解しているかどうかが、定着できる会社とそうでない会社の分岐点です。
辞め続ける会社のハード面の共通点
定着に失敗する会社には、「制度・仕組み(ハード面)」の欠如という共通点があります。
100社以上の支援経験から見えてきた、典型的な3つのパターンをご紹介します。
①入社後フォローの仕組みがない
入社してからが勝負なのに、採用したら終わり、という会社がほとんどです。
試用期間中の面談が設定されておらず、何かあって初めて「そんな悩みを抱えていたのか」と知る。
これでは遅いのです。
入社直後は「環境の変化」というストレスが最も大きい時期です。
この時期に「聴いてもらえる場」があるかどうかで、3ヶ月後の定着率は大きく変わります。
②評価制度が曖昧、または存在しない
「頑張りは見ている」という言葉ほど信用されないものはありません。
基準が明示されていなければ、社員は「頑張っても意味がない」と感じ始めます。
定着率の低い会社の多くが、評価制度を「つくっていない」か「つくったまま10年以上更新していない」状態です。
評価制度は完璧でなくていい。「どう行動すれば評価されるか」が社員に伝わる状態をつくることが目的です。
③就業規則・雇用契約書が現場と乖離している
「聞いていた条件と違う」という不信感が、早期離職の大きな引き金になります。
入社前に示した条件と実際の職場環境に差があると、社員は「騙された」と感じます。
書面でルールを明確にしておくことは、定着のための土台です。
就業規則や雇用契約書は「守るためのもの」ではなく、「信頼関係を築くためのもの」と捉えてください。
辞め続ける会社のソフト面の共通点
仕組みだけでも足りません。
定着に失敗する会社には、「傾聴・承認・コーチング(ソフト面)」の欠如という共通点もあります。
①上司が「聴く」ではなく「指示する」だけ
毎日の業務指示はある。
でも「今、何に困っている?」と聞く機会がない。
傾聴がない職場では、社員は不満を抱えたまま、ある日突然辞めます。
辞表を出されてから「そんなに辛かったのか」と知るパターンは、まさにこれです。
②承認がない職場
やってあたりまえ。
失敗したときだけ叱られる。
これが続くと、社員は「自分はここにいていいのか」と感じ始めます。
承認とは、高い評価をすることではありません。「見ているよ」「ありがとう」という言葉を日常にすることです。
特に若手社員は、給与よりも「認められている感覚」を強く求めています。
承認のコストはゼロです。でも効果は絶大です。
③育成がOJT任せ(「背中を見て学べ」)
先輩社員の忙しい背中を見て育てというスタイルは、もはや通用しません。
Z世代を中心に、「なぜそうするのか」の説明と、成長を実感できる関わりを求める社員が増えています。
コーチング的なアプローチ——「どうしたいか」「何が難しいか」を引き出す関わり——が、これからの育成には不可欠です。
教えるのではなく、引き出す。この発想の転換が定着率を変えます。
「重視」を「実践」に変える3つのステップ
では、具体的に何から手をつければいいのか。
姫路で100社以上の支援経験から、特に効果の高い3つのステップをご紹介します。
ステップ1:入社後90日間のフォロー面談を設計する
入社30日・60日・90日に、上司または担当者との1on1面談を設定する。
「何に困っているか」「何が楽しいか」を聞くだけでいい。
これがあるだけで、「ここは自分のことを気にかけてくれる会社だ」という感覚が生まれます。
1回15分でも十分です。まず「やる」と決めることが最初のステップです。
ステップ2:評価基準を1枚の紙にまとめる
完璧な評価制度は不要です。
「どう行動すれば評価されるか」が社員に伝わる状態をつくることが目的です。
まずは1枚のシートに、評価の軸を3〜5項目書き出してみてください。
「勤怠」「報連相」「業務の正確さ」「チームへの貢献」——これだけでも、社員の安心感は変わります。
ステップ3:上司の「承認の言葉」を仕組み化する
個人の性格に依存した承認では、上司が変わった瞬間に崩れます。
週1回のミーティングで「今週よかったこと」を全員が発言する、チャットで「ありがとう」を送り合う文化をつくる。
小さなことですが、積み重なると職場の雰囲気が変わります。
ハード(評価制度・面談の仕組み)とソフト(傾聴・承認・コーチング)の両輪が揃って初めて、定着は機能します。
よくある質問
Q. 小規模な会社でも定着の仕組みをつくれますか?
A. むしろ、小規模だからこそすぐに動けます。大企業は仕組みを変えるのに承認プロセスが必要ですが、中小企業は経営者が「やろう」と決めた翌日から始められます。最初の一歩は、来週の面談を1つカレンダーに入れるだけで十分です。
Q. 評価制度をつくる時間もお金もありません。どうすればいいですか?
A. 評価制度は「完成形」から始めなくて大丈夫です。A4の紙1枚に「うちが大事にしていること」を3項目書く——それが最初の評価基準です。専門家に依頼するのは、その後でも遅くありません。まず自分の言葉で書くことに意味があります。
まとめ
「定着を重視している」は、残念ながら何もしていないことと同じです。
重要なのは、それが仕組みになっているかどうか。
ハード面(評価制度・フォロー面談・就業規則)とソフト面(傾聴・承認・コーチング)の両輪が揃って初めて、定着は機能します。
「また辞めた」を繰り返さないために、今日一歩踏み出してみてください。
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姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。
