「初任給を上げたのに、また採用が決まらなかった」
そんな声を、今年何度耳にしたことでしょう。
日本商工会議所の調査によると、2025年4月入社の新卒採用で計画通りに人員を確保できた中小企業はわずか3割未満。70.7%が計画未達という結果でした。初任給引き上げを実施した会社が65%もあったにもかかわらず、です。
なぜ、お金をかけても採れないのか。そして、中小企業はどこから手をつければいいのか。姫路の採用定着士・泉正道が、現場の視点で解説します。
目次
目次
- なぜ7割の中小企業が新卒採用で苦戦するのか
- 採用の前に「定着」が先——順番を間違えている会社が多い
- 「人が足りない」という常識を疑う——AIエージェント活用の視点
- 大企業に給与で勝てなくても採れる——ターゲットの再設計
- よくある質問
- まとめ:今すぐできる3つのアクション
なぜ7割の中小企業が新卒採用で苦戦するのか
2026年度の雇用動向調査によると、正社員採用で「採用予定がある」と答えた企業は60.3%と3年ぶりに上昇しました。採用意欲は高い。しかし、実際に採れた中小企業は少数派です。
その背景には、大企業との賃金格差という構造的な問題があります。春闘の賃上げ率は大企業が先行し、中小企業との差は縮まっていません。学生は就職先を「給与水準」で比べます。大手と中小が横並びで比較されれば、条件面で劣る中小企業は不利なのは当然です。
しかし、本当の問題は賃金だけではありません。「どんな会社なのか」「入ったらどう成長できるのか」が伝わっていないことの方が、採用機会を損失しているケースが現場では多いのです。
採用の前に「定着」が先——順番を間違えている会社が多い
採用の話の前に、まず一つ聞かせてください。
「ウチにいてほしかったのに、自己都合退職していった人」が、この1〜2年で出ていませんか?
もし出ているなら、採用より先に取り組むべきことがあります。「定着」です。
採用コストは1人あたり数十万円〜百万円規模になることも珍しくありません。せっかく採用した人が1〜2年で辞めていく状態が続くなら、採用費を増やしても穴を埋め続けるだけになります。バケツに穴が空いたまま水を注いでも、量は増えません。
定着に取り組むとはどういうことか
「なぜ辞めたのか」を本人に聞けていますか?退職者の本音は、在籍中には出てきません。退職面談や退職後のアンケートを仕組みとして持っている会社は、辞める原因を蓄積して改善できます。
また、「1on1ミーティング」「評価の見える化」「成長ステップの言語化」——こうした仕組みが機能している会社は、社員の「辞める理由」を事前に潰せます。定着は、採用と同じくらい「仕組み」の問題です。感覚や雰囲気で解決しようとしても、再現性がありません。
「人が足りない」という常識を疑う——AIエージェント活用の視点
採用でも定着でもない、もう一つの視点をお伝えします。
「人手が足りない」は本当に、採用で解決する話ですか?
今、AIエージェントの進化により、従来なら人が対応していた業務を大幅に効率化できるようになっています。書類作成・問い合わせ対応・データ集計・スケジュール調整——こういった業務にAIを導入することで、1人分以上の工数を削減できるケースも出てきています。
「3人必要だと思っていたが、AI導入で2人でまわせるようになった」——実際にそういう中小企業が増えています。
採用に本腰を入れる前に、「今の業務量は本当にこの人数でないとこなせないのか」を一度棚卸しすることをお勧めします。人を増やす前に業務を減らす・自動化する視点は、今の時代の経営者には必須の発想です。
大企業に給与で勝てなくても採れる——ターゲットの再設計
定着を整え、業務効率化も検討した上で、それでも採用が必要な場合。次のステップはターゲットの再設計です。
大企業と同じ土俵で戦わない
即戦力の中途人材を賃金で大企業と奪い合うのは得策ではありません。では、中小企業にはどんな採用ターゲットが合うのか。
- 未経験者・第二新卒:スキルより素直さ・成長意欲を重視するなら有効。育てる仕組みがあることが前提
- 地元密着型のUターン・Iターン:「姫路に戻りたい」「地元で働きたい」という動機の人は、賃金以外の要素で選ぶ
- ブランクがある人材:育児・介護明けで再就職を考えている人は、「時間の融通が利く」「理解ある職場」に強く反応する
共通しているのは、「賃金以外の理由でその会社を選んでくれる人」にターゲットを絞るということです。そのためには、賃金以外の会社の魅力——職場の雰囲気、成長の機会、柔軟な働き方——を言語化して、求人票や採用ページに落とし込むことが求められます。
よくある質問
Q. 定着に取り組むとはどういうことですか? 何から始めればいいですか?
A. まず「なぜ人が辞めるのか」を把握することから始めます。退職者へのヒアリング、在籍社員へのアンケート、1on1ミーティングの導入などが有効です。特に「自己都合退職が続いている」場合は、労働環境・評価制度・人間関係のいずれかに問題があるケースがほとんどです。現状把握なしに対策を打っても的外れになります。
Q. AIエージェントを導入すれば人手不足は解決しますか?
A. AIは万能ではありませんが、事務作業・定型業務の効率化には確実に効果があります。「どの業務にどれだけ時間がかかっているか」を可視化してから導入対象を決めることが重要です。「AIを使えばすべて解決」と飛びつくのではなく、業務の棚卸しとセットで考えるのが正解です。
まとめ:今すぐできる3つのアクション
採用が思うようにいかない中小企業に向けて、今すぐできることを整理します。
- ①定着の現状を把握する:過去1〜2年の退職者を振り返り、「引き止めたかった人」が出ているなら定着施策が先
- ②業務を棚卸しする:「本当に人が必要か」を問い直す。AIや業務効率化で対応できる部分を洗い出す
- ③採用ターゲットを再設計する:即戦力より「育てられる人」「賃金以外の軸で選んでくれる人」にフォーカスする
新卒採用の苦戦は、多くの中小企業が直面している構造的な問題です。ただし、正しい順番で手を打てば、変化は必ず起きます。
「また辞めた」「応募が来ない」——その悩み、仕組みで解決できます。
姫路の中小企業の採用定着を、一緒に仕組み化しましょう。
