日本代表・森保監督に学ぶ、中小企業のチームマネジメント。姫路の特定社労士・採用定着士が解説するチームの作り方



2026年6月30日、いよいよ日本対ブラジルです。

正直、このカードが発表されたとき、ドキドキしました。W杯のトーナメントで、ブラジルと当たるなんて。「本当に?」と思いました。

ブラジルと言えば、サッカーの母国です。個の技術も、身体能力も、歴史も、すべてが次元違い。「勝てるはずない」と頭では思いながら、それでも「なんとか勝ってほしい」と願ってしまう。それがサッカーというスポーツの面白さです。

でも、ちょっと待ってください。日本が今ここにいるのは、偶然ではありません。2022年のドイツ戦、スペイン戦。誰もが「無理だ」と思ったあの試合を、日本は勝ちました。

その根拠になっているのが、森保監督のチームマネジメントだと私は思っています。「選手を信頼して任せる」「ポジションにこだわらない」「チームとしての目標と責任を全員で共有する」。

これは、中小企業の組織づくりにそのまま当てはまる話です。

今回は、森保監督のスタイルと、世界的に注目されている「セムコスタイル」という経営哲学を重ねながら、中小企業のチームマネジメントについて考えてみます。


目次

  1. 森保監督の「任せる」マネジメント
  2. セムコスタイルが示す「管理なき組織」の可能性
  3. 中小企業で「全員がリーダー」は実現できるか
  4. チームを動かすのは、管理ではなく信頼と目的
  5. まとめ
  6. よくある質問

森保監督の「任せる」マネジメント

森保一監督の指導スタイルを一言で表すとすれば、「信頼して、任せる」です。

就任当初から森保監督は、選手自身が考えて動くことを重視してきました。戦術の細部を細かく指示するのではなく、選手に判断を委ねる。ポジションも固定せず、相手や状況によって柔軟に変える。

2022年W杯カタール大会では、ドイツ・スペインという優勝候補を倒しました。あの試合の後半、システムを[4-2-3-1]から[3-4-3]に変えたあの采配。選手たちが「指示を待つだけ」の集団だったら、あの変化は機能しなかったはずです。

選手がピッチ上で自分で考え、判断し、チームとして動いた。それが可能だったのは、「目標と責任が全員に共有されていた」からだと私は思っています。

「勝つ」という目的に向かって、それぞれが自分の役割を全力で果たす。それがチームを動かす原動力になる。監督は細かく管理するのではなく、方向性を示し、信頼して任せる。

これは、企業経営にそのまま通じる話です。


セムコスタイルが示す「管理なき組織」の可能性

「階層がなく、全員がリーダー」。これを企業で実現している事例があります。ブラジルの製造業「セムコ社」です。

リカルド・セムラーが21歳で父親から継いだとき、会社は倒産寸前でした。そこから彼は、常識とは真逆の経営改革を始めます。人事部をなくす。上司をなくす。給与は社員が自分で決める。戦略計画も予算もなし。

結果はどうだったか。年平均成長率147%、離職率2%という驚異的な数字を叩き出します。

この「セムコスタイル」の核心にあるのは、5つの原則です。

  • 信頼(Trust):社員を管理対象ではなく、自律した大人として扱う
  • 代替コントロール(Alternative Control):管理ではなく自主性で動く仕組みをつくる
  • セルフマネジメント(Self Management):全員がリーダーとして行動する
  • ステークホルダーアライメント(Stakeholder Alignment):全員が同じ方向を向く
  • 創造的イノベーション(Creative Innovation):自由な発想を組織の力にする

セムラーの言葉の中で私が特に好きなのが、これです。「みんな、子供を育て、ローンを組み、交通ルールを守って生活している大人です。だから、組織の中でも、もっともっと一人ひとりに責任を与えていいはずです。」

なぜ会社に入った途端、人は「指示を待つ存在」になってしまうのか。セムラーはそこに疑問を投げかけています。

森保監督の「任せる」とセムコスタイルの「信頼」は、根っこが同じです。「人は信頼されれば、自分で考えて動く」という確信。


中小企業で「全員がリーダー」は実現できるか

「でも、うちみたいな中小企業でセムコスタイルは無理でしょ」という声が聞こえてきそうです。

半分は正しい。いきなり給与を社員が決める、上司をなくす、というところまでやる必要はないと思います。

でも、「全員がリーダーとして行動できる仕組み」は、中小企業こそ取り入れる余地があると思っています。

私が支援してきた会社の中で、機能している組織には共通点があります。「誰かの指示がなくても動ける社員がいる」こと。

逆に、機能していない組織の共通点は何か。「社長がいないと動かない」「誰も決断しない」「ミスをしても誰も改善しようとしない」。これは管理が足りないのではありません。信頼と目的が共有されていないのです。

「全員がリーダー」というのは、全員が社長になることではありません。それぞれが、自分の領域で責任を持って動くということです。営業なら顧客の期待に責任を持つ。製造なら品質に責任を持つ。バックオフィスなら業務の流れに責任を持つ。

そのためには、会社としての目標と、それに対する各自の役割が明確になっている必要があります。森保監督が「チームとしての目標と責任の共有」を大切にするのと、同じことです。


チームを動かすのは、管理ではなく信頼と目的

「どうすれば社員が自分で動いてくれるか」という相談を、本当によく受けます。

多くの経営者がやってしまいがちな解決策は、「管理を増やすこと」です。チェックを増やす。日報を課す。承認フローを厳しくする。

でも、それで社員が自主的に動くようになったという話は、私はほとんど聞いたことがありません。むしろ逆です。管理を増やすほど、人は「管理されないとやらない」存在になっていきます。

セムコスタイルの言葉を借りれば、「コントロールを手放すことで、人はコントロールを引き受けるようになる」のです。

もちろん、信頼だけでは組織は動きません。「ハードとソフトの両輪」が必要です。

ハード(仕組みづくり):目標の明文化、役割と責任の定義、評価の基準、ルールの整備。これがないと、信頼は「なあなあ」になります。

ソフト(対話と関係性):1on1、承認、傾聴、フィードバック。仕組みだけ整えても、人が「信頼されている」と感じなければ動きません。

森保監督も、この両輪を回しています。戦術(ハード)と選手との信頼関係(ソフト)。どちらかだけでは、あの試合は勝てなかったはずです。

中小企業でチームを動かしたいなら、まず経営者が「信頼する覚悟を持てるか」から始まると思います。社員を信じて任せる。その結果を一緒に振り返る。そのくり返しが、「全員がリーダー」の組織を少しずつ作っていきます。


まとめ

森保監督の「任せる」スタイルと、セムコスタイルの「信頼と自律」は、本質的に同じことを言っています。

  • 人は信頼されれば、自分で考えて動く
  • 管理を増やすほど、自主性は失われる
  • チームとしての目標と責任が共有されれば、個の力以上の結果が出る

「個の力」でブラジルに勝てなくても、日本は戦える。それは、チームの仕組みと信頼があるからです。

中小企業も同じです。大企業のリソースや知名度がなくても、チームの作り方次第で強くなれる。

「うちの社員は自分で動いてくれない」と感じているなら、まず仕組みと対話の両輪を見直してみてください。チームマネジメントに不安を感じたら、ぜひ当社にご相談ください。


よくある質問

Q. 社員に任せたら、かえって仕事がグダグダになりませんか?

A. 「任せた途端にうまくいかなくなった」という話は、私もよく聞きます。ただ、その多くは「任せた」のではなく「放置した」のが原因です。任せると放置は、似て非なるものです。任せるとは、ゴールと責任の範囲を明確にした上で、プロセスを本人に委ねること。「何を・どこまで・どんな基準で」がないまま任せれば、グダグダになるのは当然です。まず「任せる範囲」を一つ決めて、定期的に振り返る場を作る。この小さなくり返しが、自律する組織への第一歩になります。

Q. 「信頼して任せる」と言っても、放任と何が違うのですか?

A. 大きな違いは、「目標と責任の明確さ」です。放任は、目標も役割も曖昧なまま何もしないこと。信頼して任せるとは、「何を・どこまで・どんな基準で」を明確にした上で、プロセスは本人に委ねるということです。ゴールとルールを決め、振り返りの場を作る。この仕組みがあってこそ「信頼」は機能します。仕組みなき放任は、ただの無責任です。


筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

採用・定着・労務の相談は、累計3,000件超(日々更新中)、支援先は累計150社以上。

支援の軸は「ハード(制度・仕組みづくり)とソフト(対話・関係性)」の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、組織は動き出すと考えている。

チーム作りの口癖は「採用より定着が先」。採用にお金をかける前に、今いる社員が辞めない仕組みを作ることが先決だという信念のもと、全国の経営者に伴走し続けている。

生成AI支援でも同じ思想を貫く。「AI研修を受けた企業のほとんどが、1ヶ月後に何も実装できていない」という現実を前に、知識を教えて終わる研修ではなく、企業のPCを直接触り、当日動くシステムを作り上げる「実装型支援」を展開。数十万〜数百万の「助成金目当て」の研修が氾濫する中、「助成金対象かどうかは関係ない。価値があるかどうかだ」と言い切る。旗振り役・先導役・励まし役として、経営者の隣に立ち続けるのが流儀。

姫路の経営者様はもちろん、遠方の方もオンライン対応可能ですので、お気軽にご相談ください。