スマホOKにしても来ない。採用難の本質を誤魔化していないか

2026年4月22日



警察庁が動いた。スマホの使用制限を緩和し、髪形の規定を見直し、試験方式や日程まで変える。採用難に対する「緊急対策」として報じられたこのニュースを見て、あなたはどう感じただろうか。

「やっぱり時代が変わったんだな」と感じた方もいるかもしれない。しかし私は率直に言う。これで若者が来るとは思えない。問題の本質は、ルールの厳しさではないからだ。

この記事では、警察庁の事例を入口に、中小企業が陥りがちな「表面的な採用対策の罠」と、本当に必要なことを整理する。採用担当者や経営者の方にとって、耳が痛い内容もあるかもしれないが、ぜひ最後まで読んでほしい。


目次

  1. 警察庁の緊急対策が示す「採用難の深刻さ」
  2. 表面対策が生む「ミスマッチ採用」の落とし穴
  3. 採用難を突破する「選ばれる会社」の条件
  4. まとめ

警察庁の緊急対策が示す「採用難の深刻さ」

2026年4月、警察庁が採用難を背景とした緊急対策を発表した。警察学校でのスマートフォン利用の制限緩和、髪形の規定見直し、試験方式や日程の改善などが盛り込まれた内容だ。

警察という、日本でも最も保守的な組織の一つが制度を見直さざるを得なかった。これは、採用難がいかに深刻な段階に達しているかを示している。

しかし、注目してほしいのはその「対策の中身」だ。スマホが使えるようにする、髪形の制限を緩める。どれも「働く環境の入口」を整えただけであり、組織そのものの魅力を高める話ではない。

若者が仕事を選ぶとき、何を見ているか。給与や勤務条件はもちろん大事だ。だが、もっと根本的なところで「この組織で自分は成長できるか」「ここで働くことに意味があるか」を感じ取っている。ルールを緩めても、その問いへの答えが組織の中にないままでは、やはり来てもらえない。


表面対策が生む「ミスマッチ採用」の落とし穴

中小企業でも、同じ構図は起きている。採用に苦労している会社が最初に取り組みがちな対策は、次のようなものだ。

  • 求人票のデザインを変える
  • 面接の服装規定を緩める
  • 給与を少し上げる
  • 求人媒体を増やす

これらは全て間違いではない。しかし、「なぜうちで働くのか」という問いへの答えがないままで応募者を増やそうとしても、本当に活躍してくれる人には届かない。

さらに怖いのは、「とにかく人を採ろう」という焦りからミスマッチ採用が起きることだ。入社してみたら「思っていた会社と違う」となり、早期離職につながる。採用コストをかけたのに、また一からやり直しという悪循環だ。

歯科医院でも、建設業でも、製造業でも、採用難に悩む会社の多くが同じ経路をたどっている。応募が来ない → 条件を緩める → 人が来る → すぐ辞める → また募集する。この繰り返しは、「採用難」ではなく「定着しない会社」という問題が根本にある。


採用難を突破する「選ばれる会社」の条件

では、採用力のある中小企業は何が違うのか。現場を見てきた経験から言えば、共通しているのは「自分たちの会社がどんな人のためにあるか」を言語化できていることだ。

採用力を構成する要素は、大きく3つある。

  • ①採用メッセージの明確化:「こんな人と働きたい」「うちで働くとこうなれる」を言葉にする
  • ②職場の実態の見える化:社員インタビュー、1日の流れ、職場の雰囲気など、応募前に内側が伝わる情報を出す
  • ③入社後の定着設計:試用期間のフォロー、メンター制度、評価基準の透明化など、入った人が安心して働ける仕組みを整える

これらを整えている会社は、求人票のデザインを変えなくても応募が来る。なぜなら、「ここで働きたい」と感じる人に届く情報が出ているからだ。

若者は、スマホで一瞬にして会社の口コミや雰囲気を調べる。求人票と実態がズレていればすぐ気づく。逆に、等身大の情報を誠実に出している会社には、価値観が合う人が集まってくる。

採用難は「人が来ない問題」ではなく、「選ばれる理由がない問題」だ。その視点に立てたとき、初めて本当の対策が始まる。


まとめ

警察庁のスマホ・髪形の規定緩和は、採用難への誠実な対応ではある。しかし、それだけで根本が変わるわけではない。中小企業でも同じことが言える。条件を緩めることや求人票を整えることは必要だが、それは「選ばれる理由」の代わりにはならない。

採用力を上げるためにまず問うべきは、「なぜうちで働くのか」という問いへの答えだ。それが言葉にできていない会社は、どれだけ条件を整えても同じ課題に戻り続ける。

採用や定着に不安を感じているなら、ぜひ当社にご相談ください。採用メッセージの整理から、定着の仕組みづくりまで、一緒に考えます。


筆者プロフィール

泉 正道(Masamichi Izumi)
従業員100名以下の中小企業の伴走支援コンサルタント。C&Pいずみ社会保険労務士法人 代表。
採用定着士、特定社会保険労務士、生成AIアドバイザー。2025年現在、延べ100社以上の中小企業を支援。
採用・定着・労務に関する相談は累計2,000件超。

徹底的な伴走支援で、中小企業の採用定着を「仕組み化」する事を得意とする。
商工会、商工会議所、大手生命保険会社でのセミナー講師など、精力的に「事例」中心の情報発信をし続けている。

姫路播州採用定着研究所
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