ワールドカップ日本代表から学ぶ、強豪と渡り合える組織の共通点。姫路の特定社労士が語るチームマネジメントの本質



日本代表が、ワールドカップのグループリーグを無敗で突破しました。

キャプテンの離脱、久保選手のケガ。開幕前から試練続きでした。それでも、勝てなかった試合は一試合もなかった。

なぜ、格上の相手と互角以上に渡り合えたのか。戦術や個人の能力だけでは、説明がつきません。私は、あの戦いぶりを見ながら、ずっと「組織力」のことを考えていました。

強い組織には、共通点があります。そして、弱い組織にも、共通点があります。今日は、私が現場で見てきたリアルな話をします。


目次

  1. 日本代表の「組織力」とは何だったのか
  2. 強い組織に共通する2つの特徴
  3. 弱い組織が陥るパターン
  4. 「即戦力が欲しい」は、組織の停滞サインかもしれない
  5. 組織力を上げるために、今日からできること
  6. よくある質問
  7. まとめ

日本代表の「組織力」とは何だったのか

ワールドカップの日本代表を見ていて、印象的だったのは「誰が出ても同じサッカーができる」という点でした。スタメンが変わっても、戦い方のベースが揺らがない。

これは偶然ではありません。チーム全体に情報が共有され、役割が明確で、誰もが同じゴールに向かって動いている。だから、エースが離脱しても機能する。

中小企業でも、全く同じことが言えます。「あの人がいないとダメ」という組織は、属人化が進んでいる証拠です。誰かが欠けた瞬間に、がたつく。

強い組織は、特定の個人に依存しない仕組みで動いています。


強い組織に共通する2つの特徴

私が支援先で観察してきた中で、「伸びている会社」には共通点があります。特に印象的なのは次の2点です。

①良いことも悪いことも、情報が共有される

業績好調な会社ほど、情報をオープンにしています。「この取り組みがうまくいった」という成功事例はもちろん、「こういうミスがあった」という失敗情報も、きちんと共有されています。

なぜ失敗情報まで共有できるのか。それは、「ミスが起きたとき、人を責めず、仕組みを疑う」という文化があるからです。

「誰がやったのか」ではなく、「なぜ起きたのか」「どう仕組みを変えれば防げるか」を考える。この姿勢があると、社員はミスを隠しません。報告が早くなり、組織全体が学習していきます。

日本代表も同じです。試合後のミーティングで「何が機能して、何が機能しなかったか」を共有する文化があるから、次の試合に活かせる。これが組織の成長速度を左右します。

②「育てる」という概念が組織の中にある

伸びている組織では、上司が部下を育てることを、自分の仕事の一部として捉えています。自分が知っているノウハウを「自分だけの武器」として抱え込まず、後輩に渡していく。

これは、日本代表のベテランと若手の関係にも通じます。経験のある選手が若い選手に自分の感覚を伝え、チーム全体のレベルを底上げする。この積み重ねが、個人の能力を超えた組織力を生みます。


弱い組織が陥るパターン

一方で、支援していて「なかなか変われない会社」にも、共通した特徴があります。

あるメーカーでの話です。社長・専務・常務の三役がいましたが、この三者がお互いをよく思っていませんでした。情報共有はほぼゼロ。定例会議を開いても、誰かが誰かの意見を否定するだけで、何も決まらずに終わる。

この会社では、「工場長の昇格基準」が5年間、ずっと決まっていませんでした。

5年間です。誰かが案を出すたびに否定され、次の会議では別の案が出て、また否定される。そのループを5年間繰り返してきた。

私が関わって、4時間で叩き台が決まりました。

変えたのは、議論の「構造」です。お互いの意見を否定するのではなく、「どういう人に工場長になってほしいか」という共通のゴールに向かって話を整理しました。敵対していた三者が、ゴールを共有した瞬間に、議論がまったく違う方向に動き始めました。

ただ、私の姿勢として、「イエスマンにはならない」「配慮はするが、遠慮はしない」「耳の痛いことでも、経営者に伝える」というものがあります。その場でも、顧問の公認会計士ですら気づかなかった(あるいは気づいていても放置していた)問題を指摘しました。未払残業代のリスク、通勤手当を旅費交通費として毎月数百万円処理しているリスクなどです。

それがカンに触ったのか(苦笑)、結局その企業との関与はそれっきりになりました。おそらく、今もそのリスクを抱えたままでしょう。

組織の問題は、人の問題ではなく、多くの場合「構造の問題」です。仕組みと対話、この両方を変えないと、何年経っても変わりません。


「即戦力が欲しい」は、組織の停滞サインかもしれない

「育てる」という発想が薄い組織には、ある共通した口癖があります。

「即戦力が欲しい」

この言葉が出るたびに、私は少し立ち止まります。即戦力を求める気持ちはわかります。でも、これが口グセになっている会社では、採用してもすぐに人が辞めていくケースが多い。

なぜか。育てる仕組みがないから、どんな即戦力を採っても「放置」になるからです。入社しても仕事を教えてもらえない、評価基準がない、自分がどう成長すればいいかわからない。そういう環境では、優秀な人ほど早く見切りをつけます。

ワールドカップの日本代表は、育成と抜擢のバランスが絶妙でした。ベテランを大切にしながら、若い選手もきちんと試合に出す。どの選手も「自分の役割」を把握して動いている。これは一朝一夕にできるものではありません。

中小企業の経営者にとっても、「育てる」への投資は、採用費をかけ続けるよりも、長期的にははるかに安上がりです。


組織力を上げるために、今日からできること

では、具体的に何から手をつければいいか。大がかりな制度改革は必要ありません。まず、次の3つを試してみてください。

① 週1回、ミスを「共有」する場をつくる

「今週、こういうミスがあった。こう対処した。次回はこうする」という情報を、チームで共有する習慣をつくります。責める場ではなく、学ぶ場として設計することが重要です。最初は5分でいい。

② 上司に「部下が何を悩んでいるか」を聞く

月に一度でいい。上司に「今、部下は何に困っているか」を文章で答えてもらいます。これを続けると、マネジャーが部下を「見ている」かどうかが経営者にわかります。見えていない上司には、1on1の導入を提案します。

③ 昇格・評価の基準を、言語化する

「どういう人が評価されるのか」が見えない組織では、社員は頑張る方向を見失います。完璧な基準でなくていい。まず「この会社で認められるための条件」を言語化することから始めましょう。先ほどの工場長の事例のように、外部の目が入ることでスピードが上がることもあります。


よくある質問

Q. 情報共有を促したいのですが、社員が報告を嫌がります。どうすればいいですか?

A. 報告を嫌がる一番の理由は「報告すると怒られる」という経験の積み重ねです。まず経営者・上司が「ミスを報告してくれてありがとう」と言える場面を意識的につくることが先決です。言葉と態度が変わらない限り、仕組みだけ整えても情報は上がってきません。

Q. 組織改革を進めようとすると、幹部が抵抗します。どう進めればいいですか?

A. 幹部の抵抗は「自分の立場が脅かされる」という恐れから来ることが多いです。変革を「削減」ではなく「拡張」として伝えることが重要です。「あなたの経験をより多くの人に活かしてもらうための仕組み」という文脈で話すと、受け入れられやすくなります。それでも動かない場合は、外部の第三者が入ることで場の空気が変わることがあります。


まとめ

日本代表が強豪と渡り合えたのは、個の力だけではありませんでした。情報共有、役割の明確化、育成の文化。これらが組み合わさって、初めて「チームとしての力」が生まれます。

中小企業の現場でも、全く同じことが起きています。「人を責めず仕組みを疑う」文化がある会社は育ち、「即戦力ばかり求めて育てない」会社は人が定着しません。

強い組織は、ある日突然できるものではありません。毎日の小さな情報共有と、一人ひとりへの承認の積み重ねが、気づけば「辞めない職場」「勝てるチーム」をつくっていきます。

組織力に課題を感じている経営者の方は、ぜひ当社にご相談ください。外から見るだけで、変わることがあります。

筆者プロフィール

泉 正道(いずみまさみち)|特定社会保険労務士/採用定着士/生成AIアドバイザー

採用・定着・労務の相談は、累計3,000件超(日々更新中)、支援先は累計150社以上。

支援の軸は「ハード(制度・仕組みづくり)とソフト(対話・関係性)」の両輪。就業規則や評価制度を整えるだけでも、研修や面談を繰り返すだけでも、人の問題は解決しない。両方が噛み合って初めて、組織は動き出すと考えている。

チーム作りの口癖は「採用より定着が先」。採用にお金をかける前に、今いる社員が辞めない仕組みを作ることが先決だという信念のもと、全国の経営者に伴走し続けている。

生成AI支援でも同じ思想を貫く。「AI研修を受けた企業のほとんどが、1ヶ月後に何も実装できていない」という現実を前に、知識を教えて終わる研修ではなく、企業のPCを直接触り、当日動くシステムを作り上げる「実装型支援」を展開。数十万〜数百万の「助成金目当て」の研修が氾濫する中、「助成金対象かどうかは関係ない。価値があるかどうかだ」と言い切る。旗振り役・先導役・励まし役として、経営者の隣に立ち続けるのが流儀。

姫路の経営者様はもちろん、遠方の方もオンライン対応可能ですので、お気軽にご相談ください。